ドリーム小説










魔法180













穏やかな時。

外で起こるすべてのことから距離をとることを許されて。

教授と、もう一人しかこないこの場所でぬるく庇護されるだけの時間。

これじゃだめだとわかっているけれど、この温もりを手放すことは考えられなくて。


朝早くに起き出す教授を見送って。

疲れた顔で帰ってくる教授を出迎える。

何も言わない教授を抱きしめて眠るだけの毎日。

彼は何も私に話さない。

だから、私も何も聞かないの。





ソファに寝ころんで、ぼおっと天井を見上げる。

以前習った光を作り出す魔法をつぶやけば、それは簡単に発動されて、私の周りをくるくると回る。

それを目で追っていれば、その光たちは、入り口にとどまった。

と、ゆっくりと、扉が開かれる。

そこから現れたのは、疲れたような表情を浮かべながら柔らかく笑う人。

「レギュラス君」

呼ばれたことにうれしそうに顔をほころばせて、そっと私の手に触れた。

ソファに一緒に座り込めば、彼は私の肩に頭を乗せて。

深く深く、ため息をはいて、瞳を閉じた。

教授の他に入室を許されているのは、彼一人。

それ以外はだれもこの部屋に入れなくなっている。と教授は以前教えてくれた。




レギュラスの声が私を呼ぶ。

答えを求めていないそれに黙っていれば、彼は再度口を開く。

「セブルス先輩はすごいね。」

心の底から。

そんな感情を込めてレギュラス君は言った。

「こんな世界で、絶望しか感じられないようなこの世界で。」

そっと握っていた手を持ち上げられた。

「たった一人で、一人を想い続けて」

指を一本一本絡めながら。

「どちらからも恨まれて、疎まれて。」

最後にぎゅう、と強く

「それでも、まだ、この世界で生きていられる。」

そして、レギュラス君はとてもきれいに笑った。




「それは、君がいるからだね。」




私はそれに同意も否定もできなかった。















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