ドリーム小説
魔法183
ゴドリックの谷で墓参りをして。
ダンブルドアの詳しい話を求めて。
人の皮をかぶった蛇におそわれて。
その代償とばかりに、ハリーの杖は壊された。
直接的な原因はない、のかもしれないけれど、それでもハリーは自分が望んだ先にもたらされた結果に、ひどく落ち込みを見せている。
責任を感じるように彼はハーマイオニーの杖を借りて、一人テントの外で見張りをかってでた。
暗い表情も、落ち込む背中も、
残念ながら俺が慰められるような、そんな軽いものではなくて。
「ちょっとハリーの様子みてくるな」
自分の魔法がハリーの杖を壊したことに落ち込むハーマイオニーにそう告げて外へとでた。
が、ハリーの姿は見えず。
ああ、そう言えば今日だったのか、と気づく。
ゆっくりと足を進めた先。
そこにはもうすでに湖から引き上げられるハリーとそれを引き上げるロンの姿。
そして彼の手には剣があって。
「お帰り、ロン。お疲れ、ハリー」
魔法で呼び寄せたタオルを二人の体にかけてやれば、二人は大きく体をふるわせた。
「風邪引く前に、先に戻りな。」
何かいいたそうに口を開けたロンを遮ってテントの方角へ指を指す。
「はやく彼女を安心させてあげて。」
一人、落ち込む彼女を。
テントへと足を向けた二人を見送って、ゆっくりと見渡した先。
ひときわ濃い闇の中。
そこには確かにスネイプ先生が立っていて。
そのそばにはちゃんの姿もあるわけで。
へらり、笑いながら手を振る。
「睦月君、」
呼ばれたのはいつぶりだろうか。
あの日、ダンブルドアが亡くなったあの学期以来、だと思う。
ふわり、控えめな笑み。
彼女がそっと俺との距離を積めた。
「怪我とかは?」
俺にふれて、怪我の有無を確認して。
そして大丈夫だとの返事にほっと笑う。
「ちゃんも、大丈夫だね」
その人が一緒なら。
ゆっくりと指が捕まれる。
冷えていた指先に温もりが灯る。
「睦月君が、傷つきませんように。」
小さくつぶやかれた瞬間、指先から温もりが広がった。
それは体中に広がって、最後に心臓に収束する。
小さな小さな、彼女の願いは、魔法という名で存在を示す。
ならば、と俺も言葉を紡ぐ。
「ちゃんが、先生と一緒にいられますように」
俺の中からゆっくりと彼女に想いが広がる。
ぶわり、広がった熱。
けれど、それはあっさりと離された。
「こっちはまかせたぞ、睦月。」
ちゃんの手は、先生の手の中。
体も、彼のそばに。
そこにあることが自然だとばかりに、彼は彼女を引き寄せた。
お似合いには見えないその二人だというのに、その並びは違和感を感じさせなくて。
「ちゃんをお願いしますね」
俺の言葉に先生はうなずいて。
ちゃんはふにゃり、笑って、姿を消した。
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