ドリーム小説
魔法184
校長室で植物に縛られた私を教授はすぐにはずしてくれて。
とてつもなく苦々しい顔で、主犯の三人を捕まえて。
そして彼は剣を見つめて口を開いた。
「、一緒に来い」
共に姿あらわしで向かった先は鬱蒼とした木々の中、
時間は夜。
光が射し込まないこの世界では、教授の暗さは恐怖につながる。
ぎゅう、とそのローブをつかめば、慰めるように頭をなでられた。
手にはグリフィンドールの剣。
彼に剣はひどく似合わないことに、気づく。
暗い湖の底に剣を沈めて、彼はゆったりと口を開いた。
「エクスペクト・パトローナム」
低い声が、大好きな音が、あたりに響く。
瞬間、彼の杖から現れるのは一頭の雌鹿。
ゆらゆらと揺れる不安定なそれは、しかしながら確かな存在感をも醸し出す。
教授にすり寄ったその守護霊は、私の顔にも一度触れて。
彼の示した杖の先へ、滑るように走り出した。
「守護霊は、その人の心を映す」
以前読んだ書物。
それに書いてあった言葉。
私の声に教授は振り向いて。
「幸せな記憶が守護霊を作り出す」
ハリーの守護霊は、雄鹿だった。
ならばきっと、彼の母は___
「セブルスさんの幸せは、やっぱり今もリリーさんなんですね」
銀色の、雌の鹿。
いつだって、教授の中に住まう、優しい人。
攻めるわけではない。
少し寂しいなあ、と思いはするけれど。
だって、今の彼はやっぱり、リリーさんのおかげだから。
「リリー以外の幸せで、守護霊を作り出すにはいかないからな。」
ぽつり、落とされた言葉。
それは、決して大きな声ではない。
なのに、私の心にひどく響く。
言外にこもる、意味
”リリーさん以外の幸せが今の彼には存在している”のだと。
気がついた瞬間、ぶわり、喜びがあふれて。
ああ、今なら、私にも作り出せる。
「エクスペクト・パトローナム」
浮かべるのはあなたのこと。
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