ドリーム小説
魔法185
大好きなあなたのすべて。
銀色の光が宿る、
浮かび上がったのは、一つの影。
それこそ、教授と同じ背丈で、教授とそっくりな外観で。
___教授そのものだった。
ゆっくりと銀色に輝くその人は、ふわり、滅多に浮かべない甘い笑みを浮かべて。
私の前に膝を突く。
手を取られて、抵抗するまもなくその手は彼の口元へ。
甘えるようにすり寄られれば、こちらの体温は上昇していくわけで。
「っ、教授」
目の前のこの人は教授ではないけれど、姿形は愛しい人なわけで。
「」
柔らかな声。
銀色の光は掻き消えて、代わりとばかりに教授が私に手を伸ばす。
けれど捕まれた腕はそのままに、彼はそこから動かない。
私をつかんでいない方の手で、うつむきながら顔を覆う。
「お前は、本当に___」
何かをこらえるように、耐えるように絞り出された声。
それは今まで聞いたことのあるどの声とも違って。
感情が揺れる。
また、私はこの人が好きになる。
赤くなる顔を隠すように視線をさまよわせる。
と、ゆらり、視界の端で何かが動いた。
あわててそちらを見れば、へらり、笑う睦月君の姿。
久しぶりにみたその姿に、安堵と、それから喜びが沸き上がる。
目の前でうつむき続ける教授から離れるように、距離をとって。
睦月君のところへと駆け寄った。
怪我はないのか、大丈夫なのか。
問いかければへらりとしながらも大丈夫の返事をくれて。
「ちゃんも、大丈夫だね」
疑問ではなく、肯定文。
彼の目線は、私の後ろ、教授に向いて。
一緒にいれば、君たちは大丈夫だね。
そう言う風に笑うから。
うれしくて。
そっと睦月君の手に触れる。
冷えた指先を暖めるように。
込めるのは想い。
どうか、この人が、優しいこの人が傷つきませんように。
ぶわり、広がる魔法の軌跡。
睦月君の体に吸い込まれて。
そうすれば、睦月君も同じように私に想いを込める。
「ちゃんが、先生と一緒にいられますように」
広がる熱は私に広がり、確かに魔法という形で根付いた。
どことなく照れくさくて、互いに小さく笑い会う。
と、ふわり、前よりもずっと薄くなった薬草のにおい。
この人を形作る香り
それに、引き寄せられて。
任せる、と教授が告げる。
睦月君は笑ってうなずく。
私はただそれを眺めて。
ゆるり、伸ばされた手が私に届く。
くしゃり、かき混ぜられた頭。
またしばらくこの温もりには触れられない。
少しだけ寂しく感じていれば、小さな、小さな声が私に響いた
「教授を、守ってあげなね。」
それに対する否定など、私にはあり得ない
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