ドリーム小説










魔法187







なんで、こんなことになっている。

「捕まえましたぜ!!ハリーポッターだ!!」

足が、腕が、体が、ふるえる。

「よく見てくだせえ!」

目の前の現実を直視するのを拒否する。

「ドラコ、これは、ハリーポッターかい?」

ベラトリクスが僕を呼ぶ。

母上の、父上の心配そうな表情を受けて、僕の足は勝手に進む。

髪を捕まれて、引っ張られた下。

見える傷跡、緑の瞳。

めがねも、共にあったあいつ等の姿も、

それらはどれも、この人物の証明にしかならない。

「どうだい?ドラコ!」

爛々と輝く、彼女の瞳。

言葉に、ふるえる唇を開く。

「わ、わからない。」

違う、とそう言えないのは、僕の弱さ。

大事な友だというのに、大切な友だというのに、僕の手では守れないという現実に絶望しそうだ。

緑の、ポッターの瞳に僕が写る。

今にも泣き出しそうなその顔が、ひどく杓に障って。

「ぼ、僕にはわからない!」

ただ、叫んだ。

なのに、ポッターは僕を見て、かすかに、本当にかすかに笑ったんだ。

僕には今の状況を打破できる方法なんか、何一つないというのに!!


判断をいらいらとしながらまつベラトリクス。

彼女の瞳が不意に、ポッターたちをつれてきた男に、むいた。

「・・・おまえ、なにを持っている?!」

突如叫ばれた言葉。

次いで、彼女はその男へと近寄っていって。


つまり、ポッターの近くには僕しかいなくなったわけで。



「久しぶり、マルフォイ」

小さな声。

そしてかすかな笑顔。

こんな状況で見せるようなものじゃないというのに。

それはじわりと僕にしみる。

「ばか。なんで、捕まってんだよ。」

ほかに言葉が見つからなくて、罵倒にも満たない言葉がこぼれた。

「ちょっとどじっちゃった。」

ふにゃ、っと表情ゆるめて言うような言葉じゃない。

ほんとうに、ばか。

泣きそうになるのをこらえる。

考えるのはここからどうやって逃がすか。

「マルフォイ」

しかしながら僕の考えを呼んだようにポッターは僕を呼んだ。

「大丈夫、僕たちで何とかするから。」

だから、君は君が守らなきゃいけないものを、守って。

瞬間、はじかれたように視線を向ける。

そこには、僕が守りたい、守り続けたい、両親の姿。

二人とも心配そうにこちらを見ている。

剣のやりとりなんかどうでもいいように。

「ワームテール!こいつらを地下牢に放り込め!!」

ベラトリクスが叫ぶ。

そうすればワームテールがあわててやってきて、グレンジャー以外を連れて地下へと向かった。

その中にはポッターもいるわけで。



「っ、きゃああああぁぁぁ?!」

彼らに視線をやっていれば、響いた絶叫。

それは苦痛に満ちたもの。

残されたグレンジャー。

その上にまたがり、杖を突きつけるベラトリクス。

止めなきゃ。

思考が交錯する

どうやって?

体は動かないのに



僕に、なにができる?



なにもできない僕に、なにができる?



響く痛みの声。

それはどんどん小さくなっていく。

僕はなにもできないままみつめるだけで。

ああ、やめてくれ。

本当に、やめて、くれ!!


聞きたくない、見たくない、知りたくない。

このままじゃ

僕たちの生きる世界が、君たちが生きている世界が、

この世界が、どんどん嫌いになっていってしまう。




「ハーマイオニーをはなせ!!」



いつだって、そう。

おまえたちは、おまえは、


救世主みたいに現れるんだ。





なあ、ポッター。





ぼろり、一つ、涙がこぼれた。












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