ドリーム小説
魔法19
今日は、10月31日。
いわゆるハローウィンと言う日だ。
朝っぱらからいたるところでする甘ったるい匂いに頭痛がする。
ハローウィンだと告げたときのは目をきらきらとさせていた。
そのすぐ後に、いつもと同じくここから出るなと告げたときのショックの受けようはおもしろかった。
そう思うくらい彼女に感化されているのか。
(・・・煩わしい。)
あたり一面に漂う甘い匂いも、騒がしいこの広間も、うじゃうじゃといる生徒たちも。
(・・・さっさと部屋に戻りたい。)
戻ればがいるが、ここよりは何倍もましである。
いつまでも終わりを見せないパーティに溜息をついたそのとき。
ばたん
扉が大きな音を立てて開いた。そこから中に入ってきたのは闇の魔術に対する防衛術教授のクィレルだった。
「トロールが・・・地下室に・・・・お知らせしなくてはと思って。」
息も絶え絶えに告げられたその言葉に背筋が凍る思いがした。
(地下だと!?地下室には今・・・。・・・否、大丈夫だ。でないようにと釘を射してある。)
我輩は消えない感覚にふたをした。
校長の誘導の言葉を聞き流し、他の教師人と共にトロールを探しに部屋を出る。
(クィレル・・・あいついったい?)
探しているときに見つけた、クィレル。
他の者たちとは異なり、4階へと足を向けた。
地下室に、と言っていたくせに、だ。
(おかしい。)
ゆっくりと気づかれぬよう、後をつける。
クィレルの足は淀みない。
ある場所を目指すかのように。
その姿にいつもとは全く違うものを感じる。
(一体何を!?)
クィレルがたどり着いたのは4階の禁じられたろうか。
死にたくなければここへ入るなと、校長が入学式のときに話していた場所だ。
そしてあるものを守っている場所。
クィレルが入っていったその廊下にゆっくりと足を踏み入れる。
グルルルルル
そこにいたのは、3つの頭を持つ大きな犬。
(・・・ハグリッドめ・・・。)
あきらかに森の番人の仕掛けたものであるとわかる、犬。
残念ながら、これが犬で合っているのかいささか疑問が残るが、今考えることはそのことではない。
牙をむき出し襲ってきたその犬に、杖をかざし、追い払う。
そのまま、先に入ったはずのクィレルの姿を探す。
見つからないその姿に、舌打ちをもらしそうになる。
油断なく、辺りに気を配る。
もちろん、目の前の犬へのけん制も忘れない。
だが、後ろで聞こえたばたんととびらのしまる音に気をとられたのが、いけなかった。
「っつ!?」
足に走った痛みに、顔が歪む。
酷い痛みに脂汗がにじむ。
ちいさく舌打ちをし、武装解除の呪文を唱えると、すぐさま扉の向こうへと向かった。
「ちっ、油断した。」
下の階が騒がしい。
トロールが見つかったのだろう。
痛む足をこらえ、その方向へと足を向けた。
騒ぎの元凶は、あのポッターだった。
(まったく親に似て、面倒なヤツだ。)
足を引きずりながら、自室へと向かう。
と、
「お前、大丈夫か?」
聞こえてきた声。
いらいらするこの気持ちを、減点することで紛らわせようと思いそちらに顔を向けた
『きょ、じゅ・・・。』
微かに聞こえた声は。
倒れているのは黒い髪を持つ小柄な人間。
それを支えるのは、我輩が寮長を勤めている、スリザリンのマルフォイだった。
「!!」
その姿にぞっとしたものが背中を駆け巡る。
痛む足をこらえ駆け寄り、その体に手を伸ばす。
と、微かな力で、握り返す手。
あまりにも弱弱しいそれに力を込め、を抱え上げた。
「マルフォイ。このことは、他言無用だ。いいな?それと、さっさと戻りたまえ。」
釘を刺し呆気にとられるマルフォイをそのままに自室へと向かう。
抱え上げたその体はあまりにも軽い。
薬は効かない、魔法も効果はない。
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