ドリーム小説
魔法202
ハリーが、死んだ
その声は、学校中に響いて。
それは、もちろん校長室にいる私にも聞こえるわけで。
頭の中、緑の瞳を持つ彼がふわり、笑った。
仲直りすら、していないのに。
ふらり、地面に倒れる私を支えたのは、力強い腕。
「大丈夫だ、行くぞ。」
教授は強い力で私を抱き上げて。
それについてくるように、睦月君も歩み初めた。
帝王のその言葉はこちらの勢力をそぎ。
死喰い人たちの力をも増大させた。
むかった先の校門でみたのは泣きはらすハグリットに抱えられるハリー。
腕は力なく墜ちて、微動だにしない。
体の力が抜けそうになるけれど、教授が力強く抱えてくれているから、前を見続けることができて。
わらう、わらう、帝王が
宿敵を倒したと、楽しそうに。
ああ、いやだ、やめて。
ハリーは、だって、ハリーは、!
ぼろり、こぼれた涙。
それは、教授の手によって拭われる。
「大丈夫だ。」
確信のない言葉。
けれど、教授があまりにも自信満々にいうから、信じてしまいそうになる。
ゆらり、帝王の視線が、私に向く。
「おや。セブルス。やっぱり生きていたか。」
あざ笑う、瞳で、声で。
ゆらり、首を傾けて、教授を呼ぶ。
帝王が呼んだことで、教授がここにいるのが知られて。
生徒や教員たちの鋭い瞳を教授は受けることになるわけで。
思わず、抱き上げられたままの姿勢で教授の頭を抱きしめた。
それらの視線から守るために。
「大丈夫だ、。」
穏やかな声で呼ばれたからそっと手を離したけれど。
「さっきぶり、ヴォル」
にこやかに挨拶するのは睦月君。
ひらり、手を振ってみせる余裕すらあって。
帝王の表情が、ゆがんだ。
今まで見たこともないくらいに、ひどく。
その瞳に含まれる感情は、いったい何なのか。
私にはわからない。
帝王はちらり、私を視界に入れて、うっとうしそうに息を吐いて。
そして新たに口を開いた。
こちらに来るものはいないか?
今ならば、歓迎してやろう。
そんな帝王の言葉。
だれも反応しないかに見えた、それ。
「ドラコ!」
はじめに反応したのは、ドラコの両親。
潤んだ瞳で、息子に手を伸ばす。
ドラコは困ったように固まって。
けれど、その後ろにいたレギュラスが、そっとドラコの背中を押した。
「行け、ドラコ」
困った表情をさらに降下させるドラコ。
「行って、ドラコ」
瞳を赤く染めたハーマイオニーも、続けて。
どうすればいいのか、戸惑う彼に
思わず手を、のばした。
「ドラコ、守りたいものを、守らなきゃ。」
そっとささやいて、頭をなでれば、ドラコは泣きそうに私の手にすりよって。
「ごめん」
小さな声でそうささやいた。
ゆっくりと、彼は足を進めて、それを見た帝王は愉しそうに笑って。
歓迎する、と手を広げて。
その手に持っていた、杖を、ドラコに、
向けた。
「伏せろ、ドラコ!!」
叫んだのはレギュラス。
走ったのは睦月君。
「プロテゴ!!」
唱えたのは、
「ハリー!!」
ロンと、ハーマイオニー、いろんな人の口から、その少年の名前が呼ばれる。
その名前に目をむいたのは、帝王で。
振り返ったその瞬間にドラコを抱えたのは彼の両親と睦月で。
帝王に従う蛇に、剣を降りおろしたのは、
ネビルだった。
響く絶叫。
そしてあたりに一瞬にして広がる彼の魔力。
それを押さえるように呪文を唱えたのは、
教員で、騎士団員で、睦月君でレギュラスで、教授も、私もだった。
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