ドリーム小説








魔法22



『んん〜・・・よく寝た・・・。』
体の痛みも大分増しになった。
無理に動かない限りは大丈夫だろう。

ぐう〜と伸びをして体をほぐす。
どれくらい寝ていたのか、いまいち解らない。
たまに意識が上昇しても、すぐさま眠りに引き込まれていたから。
だけどもこんなにも眠っていたのにあの夢は見なかった。
あまりにも深く眠りすぎていたからだろう、と思う。
きゅるりと、おなかがなる。
最近何もお腹の中に入れていないから当たり前のことだろう。

『・・・お腹すいた・・・。・・・今は朝かな昼かな・・・。』
残念なことにここには窓がない。
つまり、時間がわからないのだ。
しかもここにはなぜか時計もない。
(きょーじゅはどうやって時間を知ってんのかな)

きゅるり
頭を動かしだしたせいでお腹のすき具合もさらにはっきりする。

『ここからでたらきょーじゅ、怒る、よなあ』

自らの欲にしたがって行動するか、きょーじゅの言いつけを守るか。
考えてる私の耳に聞こえたのはかちゃりとドアの開く音。

「きょ、じゅ・・?」


開いたドアから現れたのは間違いなくこの部屋の持ち主で。

「きょーじゅ!」

その姿を久しぶりに見た気がして声が弾む。
緩慢な動きでこちらを見たきょーじゅは私を見て安心したような不機嫌そうな、つまり微妙な顔をしていた。
きょーじゅがこちらを見たまま動かないからきょーじゅの傍へ行こうと立ち上がった。
否。
立ち上がろうとしたのだが。

『っつ!?』

がくんと揺れる視界。
傾くからだ長いこと横たわっていたせいか力が入らない足。

落ちる

その言葉を認識するが理解は追いつかない。
近づいてくる地面に思わず目を瞑った。

ふいにそのまま重力に従い落ち行くはずのからだが止まる。

ぽすり

やらかい音と共に感じるは温もり。
なれた匂い。

一瞬の沈黙の後聞こえるは溜息。

「本当にお前はじっとしていない・・・。」
怒られると思い微かに縮こまった私に振ってきたのはあきれた声。

その声は体にじんわりと染み込んで。

ふにゃりと笑いその体にぎゅうと抱きつく。

「っ!・・・」
「・・・え?」

いつもはそれくらいでよろける事のないはずのきょーじゅの体が微かに傾ぐ。
見上げた顔には脂汗がにじむ。

「!きょーじゅ、どした、です?!」
慌てて掛けた声にもきょ−じゅは反応してくれなくて。
体を起こしベッドから降りきょーじゅの全身を見る。

見つけた場所は右足。

大きな怪我。
滲む紅。
それを見たとき血の気が引いて。
「きょーじゅ、足!!」
「黙っていろ!」
騒ぎ立てた私に滅多に上げないような声を浴びせ、私の手を振り払った。

そうしてる間にも紅は広がる。

背中がぞくりと粟立つ。
振り払われた手を再び伸ばす。
「っ、触るなとっ「や!です!」」
きょーじゅの言葉を遮って右足のすそを捲り上げる。
その傷は大きなもので、ふさがっていない。
「きょーじゅ、包帯、とかどこ、です。」
その酷い傷口を見て、最初に出てきた言葉はそれで。
「自分で出来る。」
それでも意地をはってそんなことを言うきょーじゅに頭のどこかで何かが切れた。
「ふざけんなです!一人で出来る、言うなら、こんななったりしない、です!!」
怒鳴りつけた声に驚いたようにきょーじゅはこちらを見てきて、その視線がなんだかさらにむっとして再び言った。
「きょーじゅ、包帯、薬、どこです。」
「・・・・・・向こうにある棚の下から4段目だ。薬はその横にある薬品棚にある。黄色いラベルの貼ってあるやつだ。」
あきれた声。
避けられた視線。
怒鳴ったことへの胸のむかむかとした痛み。

そんな曖昧な感情を抱きながら薬品棚へと向かう。

目的のものを手にしながらこの薬品を思い切りかけてやろうと思った。



よくわからないかんじょうはどうやってけすのでしょうか



じゅわと煙を上げたその薬品に、歪んだきょーじゅの顔を見たらちょっとだけすっきりとした。












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