ドリーム小説
魔法 30
いろとりどりのお菓子にあったかい紅茶。
何よりも人と話しながら食べるそれらは一人で食べるのに比べたら最高においしくて。
「おいしい!です!くー先生!」
クレ、・・・言いにくくどもっていたら、好きなように呼んだらいいといわれたのでくー先生と呼ぶことにした。
暖かい紅茶は私の波立っていた心を落ち着けてくれて。
わだかまっていたいらいらが少しずつほどけていく。
「そ、それ、は、よ、よかった、で、す。ミス、」
その笑みはどことなくこわばって見えたけれども、それよりも何よりも話ができることがうれしくて。
慣れない英語にもかかわらずしっかりと聞いてくれて。
解らないところはゆっくりと教えてくれて。
きょーじゅとは違う優しさは、私を癒す。
でも話を聞きながら思い浮かぶのはきょーじゅのこと。
きょーじゅもこれくらい優しかったらいいのに、とか
もっと話をしてくれたらいいのに、とか。
「、は、ど、どうして、こちら、に・・?」
そういえばこの世界に来たことを知っているのはきょーじゅとこうちょとふくこうちょだけだったっけ?
そう思いながら、きょーじゅたちに言われたのも忘れて私のことを話し続けた。
そうして暖かなその時間を私はゆったりと過ごした。
時間も忘れて。
扉を開けたとたん部屋に広がる怒りに
目の前に立つ黒い物体に
その顔が浮かべる不気味なほどのにこやかな笑みに
回れ右をして全力で逃げることをコンマ2秒で決めた私はあっけなく黒い悪魔に首根っこを捕まえられていた。
「ずいぶんと楽しんでいらしたようですな?」
その声は低く耳朶を刺激する。
その怒りは深く部屋に満ちる。
その姿はとても大きくて。
振り向いたその顔は先ほどとは一転、ただ無表情だった。
それが示すものは___
「そんなにこの部屋にいるのが嫌だというのであれば、どこへでも好きなところへ行けばよかろう。」
抑揚のない淡々とした調子で述べられて。
さらには外へと放り出されて。
後ろでは扉が閉まる音。
さらには鍵の音までして。
まるで絶望に飲み込まれるように。
ただただ呆然と、言葉を出すこともできず。
ふくこうちょがたまたま訪れ、私を見つけてくれるまでその場にいることしかできなかった。
ごめんなさい ごめんなさい
声にならない声が心で響く。
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