ドリーム小説















魔法  34










くらくらする意識。

定まらない視線。

痛みを訴えるだけの頭。

回らない考えは何もかもを億劫にして。


ただ、そこにいる少年が、ハリーだということしかわからない。


鏡の前に降ろされて、痛みを訴える頭をそっとクー先生が撫でて。


少しだけ和らいだように思えた痛みはでも、誰かの声で、さらに痛みを増すだけ。


痛くて痛くて、でももう声も出なくて。

ぼんやりとした意識の中、見えたハリーが、必死で抵抗しているのを鏡越しに見ていた。


ふわり、目の前が揺れて、くらあり、鏡に映るハリーが消える。


鏡の中、いたのは黒い影。

知っている、この世界で、一番初めに出会った人。

一番初めに助けてくれた人。


大事な人、大切な人。

ぶっきらぼうで、悲しいくらい優しい人。


『ごめ、な、さ・・・』



つぶやく声は、日本語で。

きっと誰にもわからない。


動かない体を動かして、必死にその姿に手を伸ばす。


この手が、届けば、絶対に助けてくれるという、おかしなまでの安心感。



伸ばした手は、それに触れる前に、違うものに掴まれて。




「賢者の石は何処だ!」


ぎちり、掴まれたことで、少しだけ収まっていた痛みがあっけなく戻ってくる。



『っくぁっ・・・・・?!!』


もう喉がからからで乾いた音しか出ない。


っ!!」


ハリーの叫び声。

響く痛み。

反響する意識。







ぐらり、消える世界。




ハリーが私を呼ぶ声。



最後に聞こえただれかの絶叫する声。




そして小さくつぶやかれたクー先生の声。









そして意識はまた暗転






、ごめんなさい。先生の声はただ許しを請うように耳に響いた
















※※※
連れて行かれた理由としては、教授への牽制、みたいな。


back/ next
戻る