ドリーム小説










魔法 35

















まぶたの向こう、柔らかな色。

例えるなら白。

それは鮮やか過ぎず、ただ優しく私を包み込む。



あったかい温もり。

体全体を包んでくれるそれは、私を絶対の安心へと導く。

さらりさらり、前髪を流れるように触れるそれがくすぐったくて、



そっと、目を開けた。




開けた世界、はじめに映ったそれ。


「・・・目が覚めたのか?」


ふるり、目の前の黒が、滲む。


瞬間


よみがえるあの痛み。


苦しくて、苦しくて、どうしようもなくて、痛くて。



手を伸ばして、助けてと叫んだのに誰も来てくれなくて





でも、今、目の前に、この人はいた。


きてくれた



「っ!?」

「っ、ふぇぇぇぇっ・・・っ」


痛む体をたたき起して、かぶせてあった布団をはねのけて。

頭に触れていた手を辿って、その黒い体に縋りつく。


触れたぬくもりに、どっと溢れる涙。


いたかった、くるしかった、


どうしようもないくらいに溢れるそれらを、自分で制御などできなくて。



まだ小さな自分の腕では抱きつくというより縋りつく。


必死で、力を込めて、もう離れないようにとその黒にしがみついて。


ぎゅうぎゅうと力を入れて、鼻につく薬品の香りがとんでもないくらい懐かしくて。



「・・・おい、」


焦ったような気配。

でも、そんなの気にしてなんかいられない。


『怖かった、怖かった、怖かったっ、痛かった、よ、教授・・・っ!!』


叫んで叫んで。

さっきまでの痛みを怖さを払拭するように。


「落ち着け、。」



じわり、

ため息と共に放たれた言葉が、私の名前を形どる。


そっと背中をなでるようにおかれたきょうじゅのてが優しく私をなでる。




不器用で、どうしようもなく不器用で。


でも、誰よりもずっとやさしくて。





「ごめ、ん、なさっ、きょーじゅっ、」





何度も何度も泣きながら声を発する私に、きょーじゅは仕方がなさそうに私をなで続けた。








ゆるしてほしいんじゃないけれど





どうか、この場所にいることを認めてください




















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