ドリーム小説
魔法37
あいもかわらず薄暗いその場所。
薬のやぼったいにおいが充満して。
でも、私が一番安心できる場所でもあるんだ。
夢を見ることにおびえる私。
眠れないと近づいていけばため息をつかれる。
それでも、
とても優しくて、ぶっきらぼうで、それでもその人は私に
手を差し出してくれる。
そっとつかんだその手は小さくではあるけれど、握り返してくれて。
この世界で私の一番、大事な人。
まだこの感情に名前を付けられるほど、心は育ってはいないけれど。
「・・・」
ぎゅうぎゅうと教授に貰ったぬいぐるみを抱きしめて、新学期の準備をする彼を眺める。
その視線に耐えきれなくなったのか、ぴたり、動作を止めてこちらをみる教授。
「なんですか、きょうじゅ。かまってくれるですか?」
ぱっとソファから立ち上がり、ぱたぱたときょうじゅに駆け寄る。
が、首根っこを掴まれて、ぽいと部屋の外に放り出された。
「気が散る。どこかに行っていろ。」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、扉は閉められて。
むう、と口をとがらせるも残念ながら届くはずもなく。
これ以上邪魔をしては本当に部屋を追い出されかねないので、しかたなく学校内の探検に繰り出す。
といってもこの場所にきて早一年。
動く階段や絵画以外はだいたい配置を覚えて。
未だに幽霊は苦手だけれど、それでもこの場所は私にとって優しいもので。
あの日あのとき出会ったあれ。
きょうじゅが連れ出してくれたあの怖いこわい世界から。
そのときから離れていた分を取り返すように必死できょうじゅにすがりついていた。
怖いからとずっときょうじゅのベッドに潜り込んでいくたび怒鳴られたけど。
自分の世界に帰れるかどうか。
今の私にはあまり興味がないことで。
それよりもあの人のそばにいたい。
それが、今の私の望むこと。
さて、私のこの場所での生活も二年目に突入なのです。
ことしはどんなことがあるのかな
※※※※
秘密の部屋開幕
たぶん二巻はすぐ終わる。
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