ドリーム小説
魔法40
「・・・何かあったのか?」
引きこもっているくせにあまりにもにこにことしていたからだろう。
きょうじゅが不気味なものをみるような表情で私に声をかけてきた。
失礼な。
でも最近の私は大変機嫌がいいので怒ったりはしない。
その理由はこの間私を助けてくれた男の人にある。
大変、かっこよかった。
どきどきしちゃうくらいには、かっこよかったのだ。
___まるで、私の、お兄ちゃんのように。
「・・・?」
あ、なんか、家族のことを思い出したら、気分が落ちてきた・・・。
「きょうじゅ。」
手を伸ばせば困ったような顔をきょうじゅはして。
でも、じいっとみていれば仕方がなさそうに、私の手を、とってくれる。
温もりが、恋しい。
お母さん、お父さん、お兄ちゃん。
ねえ、私がいなくて、そちらの世界は、どうですか?
ちゃんと、元気ですか?
私のこと、心配、して、くれてますか・・・?
ぎゅう、ときょうじゅにすがりついて、薬草のにおいのするローブに顔を埋める。
ああ、なんで思い出しちゃったんだろう。
せっかく、気分が良かったのに。
なにもいわずに私の頭をなでてくれるきょうじゅの温もり。
うれしいはずのそれが、なぜかすごく、泣きたかった。
きょーじゅ、きょーじゅ
助けて、あのときみたいに、たすけて、
暗い世界の中、ただただ叫ぶ
手を伸ばす。
つかんでくれるはずのその人は、ゆっくりと私から距離を
とっていく
お願い、お願いだから、おいていかないで
私を、一人に、しないで
教授___
ゆるり、瞳をあけた先は見慣れた天井。
頬にぬるりとした感触を覚えて手をやれば濡れていて、先ほどまでの夢が一気に思い起こされる。
おいていかれる夢を見た
私から背中を向けて消えていくあの人の姿を
それは、とてもとても怖くて
とてもとても恐ろしくて
とてもとても悲しかった
時計をみれば、授業の時間。
どんなに望んでも、あの人がそばにはいてくれない時間。
もらったぬいぐるみをぎゅう、と抱きしめても恐怖は、消え去ってはくれなくて。
夜しか許されていない扉の向こうへ足を踏み出した。
ああ、やっぱりおとなしくしておけばよかった。
またやってしまった。
こちらをにこにこと見つめてくる無駄に笑顔を浮かべてくる男をみて、今すぐ、一目散に逃げたくなった。
けれども腕を捕まれている今、それは不可能なことであって。
「!こんなところであうなんて、奇遇ですね!」
なぜこの人は私に声をかけるのか。
ろりこんなのか、そうなのか?
私となんか話をしても楽しいことなんて一つもないだろうに。
私としては何一つ楽しくはないのだけれど。
「私、用事、あるです。」
さりげない否定の言葉、まあそれを聞くはずもなく。
「お茶でもしませんか?」
疑問文だというのに、足はすでに動き出していて、引っ張られる形で。
もうやだ、きょうじゅ助けてください。
セドでもいい、助けてください。
振り払えない腕にため息をついていればぶわり、突然視界が白く煙る。
「!」
「久しぶり!」
「そんな男よりも」
「僕たちとお茶しようよ!」
両側からのスピーカー。
ふわり、捕まれていた腕が解放されて、代わりに柔らかく手のひらが握られて。
「フレジョ!」
思わず名前を呼べば、二人はにんまりと楽しそうに笑った。
ひとのぬくもりがこいしくて
大好きな友に、手を伸ばす。
※※※※
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