ドリーム小説










魔法53


















クディッチ、というものがある。

結構乱暴で野蛮なスポーツ。

一度こっそり見せてもらったことがあるけれど、残念ながら好きではない。


好きじゃないのに、何でこの話をしたのかというと、今度試合があるらしく、いろんな人が練習をがんばっている、と聞いたから。

試合が近いから頑張る!そうハリーが話していたのを思い出しながら白の外へと足を踏み出した。

たくさんバスケットに食べ物を詰めこんで、それをマントに隠して。


身にまとうのはスリザリンカラーの制服。

支給してくれたのは教授だ。

日中に徘徊される方が安全だ、とのお考えのようで。


ポンチョをかぶってしとしとと降る雨をしのぎながら、以前出会ったところに向かう。

けれどもそこに黒い犬はいなくって。

残念だなあと思いながらもせっかく持ってきた食べ物を無駄にするのはなんだったので、そっと気の根っこに隠しておく。

いつか見つけるだろう。

弱まることのない雨足にちょっとだけ空を見上げて、お城への道を引き返す。

競技場がある方向にはいくつかの人影。

まあ興味はないので見る気はないけれど。

頑張れ、とハリーに心の中で応援をしておく。
びしょぬれのまま校舎にはいって、忍ばせていたタオルで水気をとる。

ぬれない魔法というのがあるらしい。

こういうときは、うらやましいなあ、と感じる。



と、目の前に音もなく現れた一人の女性。

大きなめがねをかけて、細いからだに高い背。

じいっと、その瞳がこちらを見つめてくるものだから思わず一歩、足を下げる。


「 この世界につれてこられた不幸な子供 」

小さくつぶやかれた声。

それは悲壮さを秘めて、頭の奥を揺さぶる。

どうして知っているの?

なにを知っているの?


聞きたい言葉は、でてこない。


ただその瞳が、ひとつ、ふたつ、大粒の滴を落とす。


「 すべてを失わざるを得なかった、かわいそうな幼子。

定まったはずの世界に、波紋を広げることのできる唯一の存在。 」


細い、指がゆるやかに輪郭をたどる。

私の頬に、手のひらが触れる


「 覚えていなさい。あなたは犠牲の上に立っているのだと。」

犠牲

耳慣れない言葉にゆるり、首を傾ける。


「それって、どういう、こと、です?」


彼女は、答えない。

ただたどる、言葉を。

紡ぐ、世界を




「 あなたは、もうすぐ、出会うわ。 」





ふわり、笑い返される。

その瞳には滴が依然として残っているけれど。



何一つ、疑問への答えはないけれど、その笑みがあまりにも柔らかいものだから。


私の瞳からも一つ、滴がこぼれた。








あなたは、だあれ?









いったいなにを知っているの?

その疑問に、答えはない






※※※
トレローニー先生。
たぶんここだけの出現。

















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