ドリーム小説
魔法56
小さな子供だと、そう思っていたのに。
気がついたら、体も、思考も、言葉も、成長を見せていて。
そういえば、実際の年齢など知らなかった、と思う。
あの夜、闇に覆われた彼女は独りでは部屋からでなくなった。
私が部屋にいるときは、常にそばにあるようになり、ねむるときだって、気がついたら私のベットにいる。
なにがあったのか。
校長たちから何度か問われたので、簡単に説明したが、それだけだ。
原因はボガート。
それを連れ込んだのは、ルーピン。
言いようのない怒りが沸き上がる一方、そうなる自分に困惑もしていて。
あのときふれた体に、小さく、柔らかで、まろやかな彼女に、なんともいえない感情が沸き上がったのは、きっと気のせいだ
「教授」
そっと呼ばれる名前。
けれどもそれには違和感しか感じない。
あのとき、私の名前を全力で呼んだくせに、今更元に戻られても困る。
ため息を一つこぼせば、彼女は小さく体をふるわせる。
「ごめんなさい」
紡がれるのは謝罪の言葉。
外が怖いのだと
独りは嫌なのだと
ぽつぽつとこぼされる心情。
そっとローブが握られる。
小さな手。
それでも、確かに私を求める手。
「ごめんなさい」
やっかいな存在で
めんどくさくて
本当に、ごめんなさい
ぼとり、ぼとり、滴がこぼれる。
透明な、きれいなそれ。
思わず手が伸びて。
その頬を包み込んでいた。
赤くはれた瞳。
涙の後が色濃い頬。
ふるえる唇。
沸き上がりそうになる感情を、そっと、なだめる。
これは、気のせいだ。
「セブルスでいい。」
口からでたのはそんな言葉。
瞳を瞬かせる彼女の姿。
それよりも自分の方が驚いている。
そんな言葉を発したことに。
そんな言葉を紡いだことに。
名前で呼ばれたいと、思ったことに。
気づいてしまっているけれど、
気づかない振りだってできるのだから
記憶の奥で、緑色の瞳をした彼女が、笑った
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