ドリーム小説
魔法60
目の前には、刃を手にした一人の男の人。
やせていて、背が高くて、ぎらぎらとした瞳をこちらに向ける。
こわい
浮かんだ感情は、脳に直結して、行動を妨げる。
がくがくと震える体を止める方法がわからなくて、泣きたくなる。
いったいなにがどうして?
あのとき、ドラコとさよならして、そのままうろうろとたださまよっていただけなのに。
クルックシャンクスが突然走り出して。
あわてて追いかけて。
そうして、たどり着いた先。
黒い、真っ黒い人がそこにいた。
恐ろしい瞳と、凶器を手にして。
一歩、また一歩。
私に近づいてくる。
逃げなければ、その警鐘は体に伝わらない。
ぺたん、その場に座り込んでしまった私は、それを見上げることしかできなくて。
よみがえる、少し前の恐怖
暗闇が、私をとらえようと手を伸ばす。
暗闇が、私を逃すまいと逃げ道を塞ぐ。
そして、
「きゃあああああああ!!」
響いたのは誰の声か。
目の前の男ははじかれたように動き出して、私の前から姿を消す。
悲鳴に導かれるように、近づいてくるざわめき。
がちがちと震えたままの自分をぎゅう、と両腕で守るように抱きしめて。
ぼろぼろ落ちる涙を、嗚咽をこらえるようにうずくまって。
「_____!?」
「________!!」
考える能力を放棄した自分の頭では周りの声が、言葉が、全く知らない物のようにしか聞こえなくて。
「!!」
私の名前を呼ぶ声と、柔らかな温もりだけ、感じた。
また、くりかえす
繰り返される
back/
next
戻る