ドリーム小説
魔法68
近くなったと思っていた距離は、たぶん私だけが感じていた。
だって、私は知らなかった。
”教師”であるあなたのことを。
教えられる立場にある、生徒のことを。
授業を行うあなたは、私の知っているセブルスではなく。
スネイプ教授と呼ばれるあなたは、教室内でほとんど私をみることはない。
自分から望んだお仕事は、私とあの人との距離を明確に示すものとなって。
決定づけられたのは、今日。
スリザリンとグリフィンドールの授業後。
残った一人の女子生徒。
彼女の質問に朗々と答えるセブルス。
その表情は、どことなく楽しそうで。
答えを求める生徒も、もっと、もっと、と知識を欲して。
セブルスが部屋に戻るときに一緒に戻ろうと、机といすを整えてぼおっと待っていれば、不意に向けられる2対の視線。
終わったのかな?そう思ってそちらをみれば、セブルスの無感情な瞳。
そして、女子生徒からの、優しくはない、視線。
「セブ__」
授業中は、スネイプ教授、とそう呼ぶことを決めていた。
けれど、授業が終わった今、そう呼ぶ必要は感じなくて。
少しでも、こっちをみてほしくて。
呼ぼうとした名前は、あっさり、遮られた。
「。部屋に戻っていなさい。」
向けられた言葉は、冷たいものではなかった。
でも、暖かくもなく。
おまえには分からない話だ、と言外に告げられているような気分になって。
「スネイプ先生。これについても、お聞きしても?」
女子生徒の声に、セブルスの意識はあっさりと私からはずれる。
そのまま教室を出る私に、再度視線が向くことは、なくって。
知ってる、よ。
あなたの知識を刺激することなんて、私にはできないって。
わかってる、よ。
私の存在は時にとてもじゃまなものになるのだって。
理解してる、よ。
私には、魔法なんて、使えないって!!
でも、でも、それでも___
手が届かないものほど、ほしいのだ
ぽろりとあふれた滴は、だれにも気づかれず。
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