ドリーム小説










魔法69


















たぶん、気がついたのは、この前。

セブルスが、教室で女性ととはなしていたとき。

柔らかな声で、ものを教える姿に。

穏やかな口調で、答えを促す様子に。



嫉妬、した。



今までは狭い狭い、世界の中。

私と、セブルスと、それから少しだけの友人と。

そんな、世界の中で。


あの人がほかにどのようにふるまうか、だなんて。

知らなかった。



少しだけの笑顔も

ぶっきらぼうな優しさも

暖かい腕も


自分にしか向けられていないだなんて、錯覚にもほどがある。





「アンタはその人のこと、好きなンだね。」


ちゃんと実感したのは、今。


目の前でふわふわと笑う一人の少女。

少し前に知り合った、柔らかな、少し不思議な雰囲気をまとった女の子。

ルーナと名乗った彼女は、柔らかな声で、口調で、私に真実を突きつけた。

「家族に対する好きとか、恋人に向ける好きとか、私には違いがわからないけど、」


ルーナの言葉はいつだって、真実そのもの。


「独り占めしたいくらい好きなンだったら、それはきっと、愛する人に向ける好きに近いンじゃないかな。」


私よりも年下だろうに、まるで頼れる姉のよう。

穏やかな雰囲気にいやされて、醜かった心がぽろぽろとはがれ落ちていく。

ひとつ、またひとつ、落ちていく滴に困るわけでもなく。

ただ、柔らかく言葉を続ける。


が望むようにすれば、いいと思う。」


決して無理強いをするわけではなく、柔らかく背中を押してくれるルーナ。

じわじわとしみこむ彼女の言葉。



そしてちゃんと、自分で認める



この感情の、名前を。


私を助けてくれた人を、嫌うわけがない

私を守ってくれる人を、好きにならないわけがない


ぶっきらぼうな優しさで、そばにいてくれたあの人を、愛さずにはいられない。


刷り込みだと、そういわれるならば、そうなのだろう。

でも、其れよりも深く、深く、しずみ込む感情は。



あの人が、セブルス・スネイプが、好きという感情は。



ほかの誰にだって、打ち砕けない。








深夜。

セブルスだって眠りについているこの時間。

そっと、彼のクローゼットからとびだして、彼の本棚を眺める。

難しい単語の羅列。

理解できない文章。


悔しかった。

あの女の子には理解できることが、私には理解できないことが。


同じところにたちたい、って思った。

あの人の思考の先に、私も入りたいって。


魔法は、確かに使えない。

それでも、知識は詰め込める。


一つ、取り出した本を抱えて、眠るセブルスのそばにたつ。





「セブルス、待ってて。」


追いかけてみるから。

すこしでもあなたにちかいところに、存在できるように。













あなたが、私を、ちゃんと、みてくれるようになるまで。


















少しだけ、時間をください。
















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