ドリーム小説










魔法73



















「スネイプ教授」




は、授業中我が輩のことをそう呼ぶ。

公私を混同しないその姿勢は非常に好ましい。


だが、最近はなぜか、授業以外の時でもはそのように呼ぶようになった。

スネイプ教授、あるいは教授、と。

セブルス、と呼ばなくなったのはいつからなのか。

魔法薬学の本を読むようになった、それからだったろうか。

彼女は教えを請うことが増えた。

今までであれば難しいと敬遠していた薬学の本を手にして、一心不乱に知識を吸収するようになって。

あの甘やかな声で、呼ばれることを、どことなく期待する自分がいたのに、それを表に出すことなどできず。


「一度、に聞いたんだよ」

どうしてセブルスと呼ばないのか、と。

聞いてもいないのに、ルーピンは我が輩に告げる。

「そしたらね、困ったように笑って、は言ったんだ。」

_大事な、大事な名前を、私なんかが呼んじゃ、だめなんです。_

_その名前を呼んでいいのは、私じゃ、ないです。_


「言ったいなにをしたんだい?セブルス」


ルーピンの攻めるような視線に、理解ができない。


なんだ、それは。

誰がそんなことを言ったというのだ。


意味が、わからない。


でも、なによりも理解ができないのは、

心の奥が揺らぐことがなくなったという安心感をもつ、自分自身で。





_セブルス_





いつだって存在し続ける

彼女と同じように、自分を揺さぶる恐怖。




甘やかで、柔らかで、


愛しいという感情を浮かび上がらせる、あの少女。


あのとき、あの場所で止まったままの自分を、ゆっくりと前に進ませようとする、存在。



それが、遠ざかるかもしれない恐怖と


それが、遠ざかってくれるかもしれない安心と















どちらを受け入れればいいというのか。


















今の自分は、答えを持たない



















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