ドリーム小説
魔法78
どうやら、私はその後眠ってしまっていたらしい。
気がついたときには、夜は明けて、全てが終わっていた。
あのねずみの男は姿を消して。
彼を追いかけていったブラックもいなくなって。
ただ、教授が本当のことを校長に話したらしく、あの凶悪犯と呼ばれた人は逃げる必要がなくなるかもしれない、と。
そんなことをハーマイオニーがかみ砕いて教えてくれた。
教授はひどく不満そうだったけれど。
「、シリウスが君にお礼を言っていたよ。」
教授の不機嫌そうな顔を眺めていればハリーがそっと私にはなしてかけてきた。
お礼を言われることをした覚えがないので、一つ首を傾げてみせれば、彼は朗らかに笑う。
「黒い大きな犬に覚えは?」
瞬間思い出すのは、禁じられた森に住む犬。
途中から姿を表さなくなったので心配をしていた。
けれど食べ物をおいておけばなくなるから、存在はしているんだろうとは思っていて。
「どうしてハリーが知っている、です?」
まるでとっておきの秘密を打ち明けるように、ハリーは声を潜ませた。
「あれが、シリウスなんだよ。」
飲み込めない私に易しく説明をしてくれる。
「アニメーガスっていうんだ。動物の姿になれる。」
「本当は秘密なんだけどね、は、特別。」
犬になれる魔法。
それはなんてすてきな魔法なんだろうか。
もっと詳しく話を聞きたかったけれど、その話は教授が私の手をつかんだことでおしまいになって。
「我輩は戻らせていただこう。」
ぐ、っと捕まれた手を引かれたので素直に教授に従って。
少しだけ後ろを振り向いて、ばいばい、とみんなに手を振ってみせる。
そうすればハーマイオニーが柔らかく笑って手を振りかえしてくれた。
「」
教授の部屋、兼、私の部屋。
教授はソファに深々と腰をかけてため息を一つはいた。
そしていつもの声で私を呼ぶ。
「なんですか、教授。」
それに答えるように教授の前に立って、そおっと顔を伺う。
疲れきった表情。
みけんによる皺。
薬品で傷ついた指先が、そっと私にのばされる。
「魔法がきかないのはわかっているが__」
伸ばされた手が、私の腰に回って、ぐ、っと引き寄せられる。
「頼むから魔法の前にでるな。」
腹部に、教授の頭。
じわり、しみこむ体温が、彼の言葉への対応を遅らせる。
「教授、」
顔に、熱が上がる。
だいすきな、人に、こんなことをされて、平常でいられるような心臓はもっていない。
「わかったか、。」
なのに、教授はそのままこちらを見上げてくる。
いつもは見上げるばかりのこの人が、私をみてくる視線は、新鮮で、そしてどこか、頼りなくて。
声を出さずに、ひとつ、うなずく。
そうすれば満足したのか、この人はまた下を向いて。
ぐ、っとすがるように、甘えてくるように、腰に回された力が強くなる。
「」
先ほどとは違いささやくような声。
耳を澄ませなければ、消えてしまうくらいの大きさ。
でも、聞かなければいけない気がして。
ぎゅ、っと答えるように教授に身を寄せる。
「我輩はシリウス・ブラックも、リーマス・ルーピンも、好んではいない。」
この人の弱音を、聞くことができるなんて、想像もしなかった。
とてもとても小さな声。
でもだからこそ真実だと伝えるようで。
「___あの場所に、おまえがきてくれて、助かった。」
あふれそうな感情をこらえるように、鎮めるように。
彼は言葉を絞り出す。
「おまえがいてくれて、よかった。」
やっぱり、私は、この人が
愛しい
今度は私がすがりつくように、力を込めた。
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