ドリーム小説










魔法80












いつもそう

教授、あなたは私を認めてはくれない。

私の存在を、見てはくれるのに。

その内側にはいることを、許可してはくれない。

少しだけ、心を許すように振る舞うのに。

私が手を伸ばそうと背伸びすれば、あっというまに突き放す。

肝心なところはふれることも許さないと壁を作る。


私を、大事にしてくれてるのはわかってる。

この人は私には甘いって、理解してる。


でも、決して心をさらけ出したりはしない。


私がこの人に向ける感情は、この人にとって重荷でしかなくて。

この人が私に向ける感情は、ただの庇護欲。

守っておかなければ死んでしまうような弱い子だから、だから守ろうとしてくれている、だけ。



私が何回この人に、すき、と発しても。

この人は決して私が望む意味ではうけとってはくれない。


だから、私はこの人に、そういう意味での存在を求めないって、そう決めたの。


間違ってくれたままでいい。

私の すき を取り違えたままでいい。


あなたのそばにいられるならば、それで、いいの。



それで、いいのに。





「っ、」

「教授!?」

夏休み中、教授の家で。

本当に突然だった。

あなたが、腕を押さえて痛みにこらえるようにうずくまったのをみて。

驚いた私はそれに駆け寄っていった。

「教授!!」

必死に呼んで、その痛みの元を、辿ろうとした。

そのために、その手に、その腕に、ふれた。


瞬間


「っ、さわるな!!」

ばしり

ひどく重い音とともに、私の手は振り払われて。

その衝撃に私の体は簡単に吹き飛んで。

「っ、」

痛い

その感情に支配される。

力を、振りかざされることなんか、なかったから。

そんなこと、ないと思っていたから。

「きょう、じゅ、」

ゆっくりと、教授をみれば、その表情は今までにみたことのない色を宿していて。


「金輪際、この腕について、触れるな。」


炎のごとくあふれるあなたの怒りに、恐怖して

濁流のように押し寄せるあなたの感情に、怯えて




心を少しでも、砕いてくれていると思っていた。

少しだけでも、信じてくれていると。


それは、ただの錯覚だったのか。



揺れる私の瞳を、しばし、見つめて。

苦しむように、言葉を飲み込むから。



「だいじょうぶ、教授。私はなにも、聞かないですから。」



笑ってみせるしかないじゃないか。


「・・・すまない、。我輩は、少しでてくる。」


そういって、あなたは私以上に不器用に、笑った。





あなたはとても優しくて、不器用。

だから、愛しい。

私はあなたを突き放したいなんて、離れたいなんて、思えない。

だから、安心してほしい。

別に彼がなにも教えてくれなくても、かまわないと思っている。

だって、私に必要なことはちゃんと教えてくれる人なのだから。

なにも教えてくれないということは、私には必要ないことなのだろう。


頭の中、先ほどの教授の顔が浮かぶ。


炎のごとくあふれるあなたの怒りに、恐怖して

濁流のように押し寄せるあなたの感情に、怯えて


なのに、なのに。


私に向けた大きな感情の揺れに、

切なさをたたえるその瞳に、ひどく欲情した

私はどうやら、自分で認識している以上に、彼を愛おしんでいるようだ。



だって、だって、私は あなたの表情を、たとえそれが負の感情であろうと、


あなたのことを


もっと知りたい、と願ってしまっているのだもの。



























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