ドリーム小説










魔法88












ごちゃごちゃする頭を抱えて

あふれそうになる感情を鎮める

一人になりたい。

一人になって、全部全部、吐き出したい。


そう思って向かったのは天文台。

星ふるせかい、ひとりきりになれるばしょ

なのに、なのに。

そこには、先客がいて


赤色の髪を、柔らかく泳がせて彼は振り向く。

「こんばんは、だね。

柔らかい笑み。

ひらり、一度手を振って。

こんばんは、同じように返して、小さく笑う。


「珍しいですね。フレッドが一人でいるなんて。」


私の言葉に、フレッドは少しだけ目をすがめた。

「そんなことはないよ。僕たちだって、一人ずつで行動するさ。」

ひょい、と彼は腰掛けていた窓から降りる。

そのままくるり、腕を回して。


「それよりも、さ、___」


ふわり、笑う表情が、深まる。


私を、捕らえるように。


ああ、一刻も早くこの場所から逃げ出さないと。

足を一歩、後ろへと下げる。



はやく、にげないと、いけないのに

そんな声で、優しい表情で、私の名前を呼んじゃだめだよ。




手を、のばしちゃだめだよ。

そんなことをされてしまえば、私は、私は、



、おいで」


「っ、」



苦しい

苦しい

心臓が、いたくて、くるしい


たすけて

たすけて、だれか___



その優しさにあらがえるほど、私は強くないんだから。



広げられた両腕に、あふれる涙と共に飛び込む。



すがりついた体はみため以上にがっしりとしていて。

なだめるように大きな手のひらが頭を、背中をなでてくれて。


フレッドの温もりが、じわりじわりと私に浸透していって。



穏やかな声。

暖かな、響き。

それに反抗するように、叫ぶ。


「忘れて、たのにっ、忘れていられたのに!!」


家族のこと、私の世界のこと


教授に依存することで、すべて忘れていられたのに。


彼の存在が、すべてを壊した。


ここは私の場所ではないと


痛い、心臓が痛い。


帰りたい、なんて感情。

なかった。


彼のそばにいたいって、願うだけだった。


でも、睦月君が、あんな絞り出すような声するから。


私のなかの、暗いくらい場所を引きずり出したから。


叫ぶ


叫ぶ



痛みを、苦しみを


全部、全部さらけだして。

感情を、爆発させて。


日本語だったのか、英語だったのか、

それすらわからない。



乱れていく思考の中。

一つだけ確かだったのは、フレッドがずうっと抱きしめてくれていたこと。


「どこからきたんだとしても、がここにいてくれることが、ただうれしい。」



そして、そんな彼の言葉だけ。




















back/ next
戻る