ドリーム小説
魔法90
魔法薬学の授業の後。
いつもであれば真っ先に教室を出ていく僕らだけれど、今日は違って。
皆の不思議そうな顔に笑って返して、教室が僕らと教授だけになるのを待つ。
幸いというかなんというか、今日ははこの授業には来ていない。
授業内容的に手伝いが不要だったとかだろう。
・・・たぶん。
「何を考えているのかね?Mrウィーズリー。」
教壇の前にたっていたはずの教授がいつの間にか目の前にいて。
不服そうにこちらを見下ろしてくる。
それをまっすぐに見返して、口を開いた。
「スネイプ教授」
我らが薬学教授は名前を呼ばれるのも不快、とばかりに眉を寄せる。
そんなんだから、あの子以外はあなたを誤解するんでしょうが。
思っても伝えはしないけれど。
「が、僕らの前で泣いたんですよ。」
発した名前。
それに教授の瞳がゆらり、揺れる。
けれどもそれはすぐに掻き消えて
「___授業に関係のないことなら、」
「あなたじゃなく、僕らを頼ったんです。」
話を打ち切ろうとする教授の言葉を遮る。
不機嫌さを増したところで知ったこっちゃない。
「あなただけを頼っていた小さな少女はもういない。」
思い出すのは去年のハロウィン。
僕らの腕の中、教授だけを求めていたあの少女。
「それはあなただけの特権じゃなくなった。」
そんな彼女が僕らの手を取った。
「彼女の手を離したのはあなたです。」
「彼女を突き放したのはあなたです。」
柔らかく微笑む少女。
初めてであったときよりもずっと大人びた少女。
全身で、教授を慕い。
いつだって、その背中を求めて。
僕たちには決して向けられない眼差し。
向けられた先には、いつだって薬学教授の存在が。
「彼女が僕らに手を伸ばした。」
「彼女は僕らに助けを求めた。」
教授だけを求めていた彼女の視野は広がり
教授だけだった世界は開かれ
教授のためだけにあった両手は、僕らにのばされて。
「スネイプ教授」
不機嫌そうな表情はそのまま。
でも、なぜか話を聞き続けていて。
「彼女が僕らを求めるなら、僕らはそれに答えます。」
「あなたが彼女を突き放すなら、僕らが彼女をもらいます。」
彼女が別の世界の人間だろうと、そんなこと関係ない。
むしろ面白い、と笑ってみせる。
かわいいかわいい、妹のような存在。
兄のような、友人のような、そんな気持ちで接するのは、もう終わり。
「だから、スネイプ教授」
「覚悟していてくださいね。」
まだあの眼差しが向けられるのはあなただけだろうけれど。
その手をつかめたならば、こちらにだって可能性はあるんだから。
※※※
双子参戦
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