ドリーム小説
魔法95
「ちゃん」
この場所では彼しかその呼び方をしない。
ゆっくりと振り返れば想像道理の姿。
にこやかな笑みを浮かべながら手を振る睦月君が近づくのを待つ。
「ずるいなぁ。ハリーポッターがホグワーツの二人目の代表選手なんて。」
発せられた言葉とは裏腹に、笑顔は崩れない。
「ちゃん、彼と仲いいの?」
こてり、傾げられた首。
嫌みのない動作に、あっけらかんとした口調に、微かにあった緊張が解ける。
あの日、私に縋って震えた彼
それが嘘みたいに消えていて。
「友達だよ。」
そう告げれば彼の瞳は眇められる。
「代表選手に名乗りを上げようなんて、そんなことしない、控えめで優しい男の子。」
だからこれは、彼の意志じゃあない。
そう言外に込めれば、睦月君には伝わったようで。
そうかそうか、と返された。
「睦月君は代表選手に立候補してたの?。」
今度はこちらから問う。
そうすれば睦月君はにやり、口角をあげて。
「どっちだと、思う?」
とのたまった。
正直なところどっちでもよかったから曖昧に笑い貸せれば、けらけらとなにが楽しいのか声を上げて睦月君は笑って。
「ちゃん、もっと俺にも興味を持ってよ!」
ばしばしと痛いくらいの力で背中をしばかれる。
「睦月君、」
痛い__
そう伝えようとした瞬間、衝撃は消えて。
「ちょっとちょっと。」
「あんまり乱暴に扱わないでくれるかな?」
代わりに耳になじんだ両サウンド。
次いで腕に回されたのは温もり。
「ジョージ、フレッド」
名前を呼んで見上げれば、にんまり、笑う赤髪の双子
それをみていれば自然とこちらも笑顔になって。
「「僕らをみてそんなに笑顔になってくれるなんて」」
「かわいいなあ!」
「うれしいなあ!」
「ちょ、ま、頭っ、」
ぐりぐりと頭をなでくり回される。
なんだろう、今までも何度だってあったはずなのに。
いつもと違う気がする。
確かに元々スキンシップは激しかったけれど
ここまで、ぎゅうぎゅうとだきしめられて、なでくり回されるのは、初めてなきがする。
『・・・ねえ、ちゃん。』
フレッドとジョージからのスキンシップを必死に受け止めていれば、睦月君が私を呼んだ。
『なに?』
彼との会話はいつだって日本語。
そこに、他の人は入ってはこれない。
『その二人は、大事?』
どうしてそんなことを聞くの?
そう問いかけたかったのに、彼の瞳があまりにも痛々しくて。
『とても、大事だよ。』
気がつけばそう言っていた。
『___そっか』
小さなつぶやき。
彼の瞳が一度、二度、瞬いた。
すう、っと色が、消えて。
そのまま、彼が消えてしまいそうな錯覚に陥った。
思わず、手を、のばす。
「!」
つかんだ腕は、先ほど触れられたときに比べて、ひどく冷たくて
「睦月君も、大事だよ。」
私の言葉に、睦月君の瞳が、驚きで見開かれる。
そのまま微かに視線をさまよわせて。
「 」
小さくつぶやかれた言葉。
なんて、言ったの?
尋ねようとすれば、にぱり、一瞬で彼の瞳は輝いて。
今までの闇の色が消えたみたいに、笑う。
『俺も、ちゃんが大事だよ。』
痛そうに、笑う。
「なになに?」
「何の話してるの??」
双子が自分の理解できない言葉を話されることにしびれを切らしたように間に入ってきた。
「秘密、だよ」
にぱり、睦月君は人なつこい笑みを浮かべて告げるものだから、私はそれ以上話を聞くことができなくて。
「、僕たちとももっとかまってよ!」
「、僕たちをもっとみてよ!」
きゃあきゃあと横で騒ぐ二人をそのままに、手を振って去っていく睦月君を、眺めた。
「 もう、いまさらおそいよ。 」
その言葉の真意は、なに?
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