ドリーム小説
魔法96
ぱしん
しばいた音は、大広間によく響いて。
大人数が集まることで生み出されていた喧噪が、止まった。
たたいた手のひらはじんじんと熱を生み出して。
たたかれた本人は頬を押さえて呆然と私をみてくる。
なぜ叩かれたのかわからない、そう言いたげな瞳を再度強く睨みつけた。
「なにするんだよ。」
私の睨みに一度からだをふるわせて、けれど、抵抗するようにこちらを見据えて言葉を発した。
その髪と同じように赤く染まった頬。
でもそれに罪悪感もなにも浮かばないほどには私は怒っていて。
「なにをするんだ?何で叩かれたのか、あなたは理解していないんですね。」
少し離れたテーブルで驚いて立ち上がったハリーが見えた。
その横ハーマイオニーもどうしようかと視線をさまよわせていて。
いつも一緒に行動していた三人が、距離をとっている、
それも、ロンだけが極端に。
「目立ちたがり屋の英雄だなんて、ねえ、ロン、それは誰のことですか?」
なにがあったんだろうか。
そう思いながらロンの後ろを通ったとき聞こえてきた言葉。
なんとなく、理由はわかった。
ハリーが抜け駆けをして、ゴブレットに名前を入れたのだと、そう思っているのだろう。
つまり、ロンはハリーがうそをついていると、そう信じているのだ。
わかっても、理解なんかしてあげれない。
だって、だって、ロンあなたのせいで現にハリーは傷ついている。
一番信じてほしかった人に、一番信じてくれるだろう人に、
あっさりと手のひらを返された。
「あなたは3年間、ハリーと一緒にいたのではなかったですか?」
あなたがハリーを信じなくて、いったい誰が信じれられる?
「ハリーがそんなことをする人だと?」
ハリーのなにをみてきたの?
私の言葉にロンは、ぐ、っと息を詰めて。
そしてひどくつまらなさそうに笑った。
「僕は、もう疲れたんだよ。有名人の友人でいることに。」
有名人。
それはハリーそのものを示す言葉ではなく。
か、っと熱が上がった。
名前を呼ぶことさえ、今のあなたは嫌なのか。
ハリーと距離があるから、内容が聞こえていないことだけが救いだろう。
視界の端で双子がこちらに走ってこようとするハリーたちを止めてくれている。
沸き上がる衝動のまま、再度手を振りあげる。
今度は素直に受けるつもりはないのだろう。
ロンは立ち上がって私の手を、止めようと、つかん、だ。
「そこまでにしておけ、ウィーズリー。」
でも私の腕をつかんだのはロンじゃなくて。
後ろから包み込むように腕を回されて、視界のはしには緑のローブ。
いつの間にか、見下ろされるほどの身長差になってしまった。
宥めるように、彼のもう一つの腕が頭をなでてくる。
こわばっていた体が、ゆるゆるとほぐれていく。
「マルフォイには関係ないだろう。」
一気に険悪な雰囲気を醸し出したロン。
でも、私の後ろにいるドラコはそれを相手にする様子もなく。
「理由は何であれ、女性に手を挙げるのは人として最悪のことだろう」
ほ、と一つ息を吐く。
ドラコのおかげで高ぶっていた感情が収まって。
先ほどとは違い冷静な目でロンをみることができた。
うろうろとさまよう視線はロンの心境を表すよう。
堅く閉じた口元は、自分の発した言葉を後悔するかのようで
ああ、年上としてとても恥ずかしいことをしてしまった。
「ごめんなさい、ロン。ひどく大人げないことを言いました。」
小さく息を吐いて、そっとドラコの手に触れて。
おそるおそる、口を開く。
そうすればさまよっていたロンの瞳は私にむいて。
「・・・僕こそごめん。女の子の、それも年下にカッとなっちゃった。」
・・・ちょっと待ってほしい。
「・・・ロンって私をいくつだと思ってるんですか?」
先ほどの言い合いも謝罪も忘れて、思わず口から言葉がこぼれる。
ロンはきょとん、とした表情、後、
「ジニーと同じかそれより下。」
だとかのたまった。
ちょっとショックだそんなに幼くみられていたなんて。
驚きで言葉を発せない私に変わるように第三者の声が混じった。
「ざんねーん。ちゃんは俺と同い年。今年16歳、かな」
楽しがるような睦月君の声。
次の瞬間、至る所から驚きの声が挙がる。
「、おまえ年上だったのか・・・?!」
ロンだけでなくドラコも、さらに言えばハリーたちもびっくりした表情。
・・・切ない。
ふわり、香った薬草のにおい。
同時に低い声があたりに響いた
「グリフィンドール10点減点。__、部屋に帰るぞ。」
大広間に響く声で、減点を。
私の耳元だけで最後の言葉を。
未だにショックを受ける私を教授は軽々と抱き上げて。
大広間の出口へ向かう。
「教授、私ってそんなに幼く見えるんですか・・・?」
無言=肯定
私の言葉に教授は無言を貫いた。
※※※
ちなみに教授自体もちゃんとした年齢を初めて知ったという。
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