ドリーム小説










 BASARA24・5







が毒で倒れて、3日目の夜。政宗は、の部屋の前に座っていた。

この3日にあった様々なことが政宗の頭の中で駆け巡る。

が倒れた日には、近々武田と上杉が戦を起こすと黒脛布組からの情報がきていた。

そして、が何者かの毒で倒れ、そのときの主犯らしい、紀伊は毒矢に倒れてからいまだに目覚めてはいない。

もう一人の主犯と見られる、菫という女中は他国の忍びであることが発覚した。

今は、と紀伊が目覚めるまで地下牢につないである。

それ以外の女中たちは、この件に関しては関与してしていないということなので今までどうりに過ごさしている。

しかし間者が紛れ込んでいた所為で、城中の雰囲気はぴりぴりとしていて、成実も以前以上に眼を光らせていた。



けれどもそれらの何より政宗の脳裏に色濃く映るのは、目の前で倒れていった、華奢な体。

触れた肌の異常なまでの熱さ。

思い出すと今でも震えがこみ上げる。

(情けねぇ・・・。毒にこれほど反応するなんてな・・・。)



幼き日の自分が蘇る。



『殺す』目的でいれられた毒。



自分の中を侵食していった、恐ろしい感覚。



今でも鮮明に思い出されるそれらの記憶。



それらに頭を振り、政宗は思考を元に戻す。

月の光は明るく、優しく政宗を包み込む。





さわり




後ろの部屋の中で気配が揺れた。

が起きたのだろう。

体は大丈夫なんだろうか。

そう考えていると、静かに、後ろの襖が開く。

何も言わないに疑問を感じ、政宗はそっと視線をそちらに向けた。







(・・・Beautiful・・・。)



昼とは違うその姿。

月の光によって、もともと白い肌がさらに白く見える。

うっすらと闇に浮かび上がるその姿は幻想的で、真っ黒な髪が光を反射して輝いている。

そしてその中でも一際目を引くは、強い意志を秘めたその瞳。



とくん



小さく胸が音を立てた。

その音が相手に聞こえているような錯覚に陥る。



視線が合わさったままのの瞳が小さく揺れた。



とくん



視線が交わることに


呼吸をしていることに



相手がそこにいることに



政宗は酷く安堵した。



「・・・。」


「ま、さむ、ねさま・・・。」

掛けた声に答えがあることが、酷く嬉しかった。

思わず口角が上がったのが自分で解った。


「・・・どうした??」

挙動不審にあちらこちらを見るに声を掛けるが何でもない、と返ってきた。

(・・・何でもないって、どもってるじゃねえか・・・。)

そうは思ったが聞き返すのも変に思われてそうか、とだけ言い、月を再び見た。



「How are you?」

「・・・えっ、あっ元気、です。」

そういえばこいつはさっきまで毒の所為で寝込んでいた。

体は大丈夫なのか、そう思い尋ねた政宗には慌ててそう返事を返した。

「どっか変なとこはねーか?」

再び質問を投げかける。

と、一拍の間を置いては政宗に詰め寄って来た。

「つっ、私なんかより、政宗様は何とも無いですか?!食べてませんか?!」

その勢いに政宗は少し驚いたがすぐに返事を返す。

「ああ。俺は平気だぜ?が助けてくれたからな。それよりもお前の方が大丈夫なのか?」

「よかった・・・。」

政宗の質問には答えず、返事だけを聞いてそれに本当に、ほっとしたようにはその場に座り込んだ。



「くくっ。俺よりも自分の心配をしろって言ってんのによ。」

その姿があまりにも情けなくて、政宗は笑いをこぼす。

それと同時にそこまで心配していてくれたことに、胸の奥が熱くなる。

立ち上がり、の傍まで行き起こすため手を差し出した。



そのときだった。


 ザアアァ


強い風が吹いた。

その風に政宗の視界がクリアになる。

右目に感じる違和感。



(・・・っ、眼帯、して、ねぇ)


すごい風ですね。そう言いながら見上げてくる、部下の顔に恐怖が刻まれる前にと、政宗は手を振り払い、右目を隠した。



『この、化け物が!』



頭の中で何度も繰り返されるそれに政宗は右目を強く抑えた。


ただ、そこにはあるのは


     真っ暗な闇だけだから。


















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