ドリーム小説
BASARA24
ふわり
意識が舞い上がる。
そっと開けた目に映るは、暗闇。
ぞくりとした背中をそのままに幾度かの瞬きを繰り返す。
暗闇に慣れてきた瞳が映し出したのはここ何日かで見慣れた天井。
ゆるりと揺れる視界を再び目を瞑ってやり過ごす。
何か夢を見ていたような気がするが、思い出せない。
そっと体を起こせばぎしりときしむ。
それと同時に訪れるわずかな喉の痛み。
それにわずかに顔をしかめながら布団の上に座ると、はそっと息を吐いた。
座ったことによって変わった景色。
入り口であろう襖には月の光だろうか、うっすらとした光が差し込んでいる。
「・・・?」
そんな中、襖の向こうで何かが動いた。
それに疑問を抱いたはゆっくりと立ち上がると、その方向へとよろめく足を進めた。
そっと手を襖に掛け開ける。
そこには月の光を全身に浴びる一人の男性がいた。
(・・・きれい・・。)
そんな言葉さえ陳腐だと思わせる。
太陽の下では眩しいほどのその人は、月の下では神秘的に輝いて。
この場所にある全てのものがただ、彼を飾り立てるだけの小道具に過ぎなくて。
襖に手を掛けたまま、何も言えずに立ち尽くす。
そんなに音も無く、視線が向けられた。
とくん
一つしかない瞳が、を捕らえる。
とくん
呼吸が、聞こえる。
とくん
鼓動が、高まる。
とくん
視線が、交わる。
とくん
それらはまるで、龍に食われるかのような錯覚。
「・・・。」
ふいに相手が発した自分の名にはそれらの感覚から逃れる。
「ま、さむ、ねさま・・・。」
つたない声で相手の、主の名を呼ぶ。
聞こえるか聞こえないかの小さな声は、きちんと耳に届いたらしく、小さな笑みが返ってきた。
どくん
静まったはずの、鼓動が再び早まる。
体温が、上がる。
熱が、高まる。
(なに?・・・これ・・!?)
何をされたわけでもないのに、その声に、笑みに、翻弄される。
「・・・どうした??」
挙動不審なを見て、政宗は尋ねる。
「っ、何でも、無いです。」
そうか、と言い再び月に目線を戻した政宗には安堵の息を吐く。
(っ・・・いっ、今が夜でよかった・・・。)
は切実にそう思った。
「How are you?」
「・・・えっ、あっ元気、です。」
唐突に話された言葉には慌てて返事を返す。
返しながらも、は何故そんなことを聞かれるのかと思考をめぐらす。
「どっか変なとこはねーか?」
その政宗の言葉に、の脳裏に一瞬にして今までの出来事がよみがえってきた。
「つっ、私なんかより、政宗様は何とも無いですか?!食べてませんか?!」
の記憶の中では、政宗は食事に手をつける前だったはずだ。
だが、もし食べていたのなら・・・。
ぞっとする思いに駆られ、は政宗に掴みかかる勢いで、尋ねる。
「ああ。俺は平気だぜ?が助けてくれたからな。それよりもお前の方が大丈夫なのか?」
の勢いに少し驚いたように見えた政宗だが、すぐにそう返してきた。
「よかった・・・。」
政宗の返事に安心して力が抜けたのか、はへなへなとその場に座り込んでしまった。
「くくっ。俺よりも自分の心配をしろって言ってんのによ。」
政宗はそう言うと座っていたところから立ち上がり、の元までやってきた。
ほらよ、と差し出された政宗の手にが自分の手を差し出そうとする。
そのときだった。
ザアアァ
強い風が吹いた。
その風にが目を細める。
すごい風ですね。そう言いながら見上げた主の顔。
普段は前髪によって隠されていたそこは風によりめくれ上がり、
いつもなら眼帯があるはずのその場所には遮るものは何も無く、
ただ、そこには、
真っ暗な闇が見えた。
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