ドリーム小説





 BASARA28




「はいは〜い。そこまでにしとこうか、お兄さんたち。」


否定の言葉を出そうとした

その体が男たちとは別の暖かいぬくもりに包まれる。


「え・・・?」

顔を微かに動かせば見えたのは橙色。

「嫌がってる女の子を、そうやって連れて行こうとするのはどうかと思うよ俺様。」

混乱する頭は今の状況についていくことができず、更なる混乱を招く。

「てめえ!それは俺らが先に声掛けたんだ!後から出てきたくせに何すんだ!」

その怒声にの体はびくりと震える。

それを感じたのかを包むそのぬくもりは微かに強くなった。

 まるであやすかのように。

はあとその人は溜息をつき言った。

「あのさ、さっさと去った方が身のためだよ。」

さっきまでの軽いしゃべり方ではなく、ずっと低い声。

自分に向けられてるわけじゃないのにぞっとする。

それを真正面から受けている彼らはどんなに恐ろしいだろう。

案の定男たちは顔を引きつらせると、覚えてろよと言う捨て台詞をはいて町の喧騒の中へと消えていった。

「はっ、誰があんたらなんかを覚えてるかよ。」

「・・・この世界でもいるんだ、あんな捨て台詞はく人・・・。」

ぽつりと呟いた声に、を包んでいた温もりが揺れた。

「?・・・っつ!」

それを不思議に感じ見上げた顔が思いのほか近くて、さらには今の状態を思い出して、の体は一気に発熱した。

「あれ〜、どうしたの?お嬢さん。・・・顔赤いよ。」

不思議げに見下ろすその目は楽しげにゆがめられ、さらには最後の一言はの耳元で囁やかれ。

「〜〜〜〜つっ!」

それにさらに真っ赤になったはこれ以上からからかわれる前にと、その男性の腕から抜け出した。

「、つっ、助けて、いただい、て、ありがとう、ございます!」

赤い顔を見られたくなくて、俯いたままは言う。

と、それに対し笑い声が聞こえてくる。

むっとしたは今まで俯いていた理由も忘れ、ばっと顔を上げる。



先ほどと違い真正面からその人を見る。



改めて見た顔は整っており、綺麗、だ。

橙の髪は目立つ色にもかかわらず、その男を際立たせている。

緑の着物の形は、旅装束で旅人なのだろうと、思う。

(この人も、綺麗、だ。)

政宗と出会ったときとよく似た感想が頭に浮かぶ。

(・・・そして、どこか政宗様に似通ったものを感じる・・・。)

自分で考えたことにげんなりとし、慌ててその考えを頭から追い出す。



(・・・でも、政宗様と似てても、別の人、だ)



がそんなこと考えている間もその男の笑いは止まらない。

「・・・はぁ・・・。」

それに溜息をついたときようやくその男はを見た。

「いやあ、ごめんねぇ。君の百面相がおもしろくて、つい。」

じとっとした目で見るにその男は笑いながら言った。

「ごめん、ごめん。お詫びにお団子でもおごるよ〜?」

それに一瞬ぱあぁと顔を輝かせた



    『Wait here.』



だが、政宗の言葉が頭に蘇りゆっくりと首を横に振った。

「あれ?甘いもの嫌いだった?」

「いえ!すごく好きです!でも、ここで人を待ってますから。」

そう言ってとても嬉しそうに笑った。

それに男は目を細めるがすぐに笑顔に戻った。

「ところで、お嬢さんの名前を聞いても?」

「えと、といいます。さっきは助けていただきほんとにありがとうございました。」

そう言ってぺこりと頭を下げた

それに男は木の陰に隠れるようにしていた馬を見つけ聞いた。

「いいえ、どういたしまして!ねぇちゃんが待ってるって、この馬の持ち主さん?」

「はい、そうです。」



その答えにその男の雰囲気が、変わる。



「っつ・・」



ぞくりとしたものがの背中を走る。

先ほどのが比べ物にならないほど強いそれ。


ちゃん、さ。この馬の持ち主さんと、どういう関係?」



そういって振り向いたその男の目は笑っているけど笑っていない。

この世界で幾度となく感じたそれ。

(成実様、と、おな、じ・・・)

しかし以前のそれとは、違うもの。

疑惑なんて生易しいものではなく、

これは、明らかな敵意。


殺気と言えるであろうそれは、少しも緩むこともなくに降り注ぐ。


「つっ、あっ・・・」

「それとね、さっき言ってたよね?『この世界でも』って。あれも、どういう意味かな?」

冷たい瞳は全ての感情を切り捨てている。

そして悟った。


(この人は、わたしを、みてくれな、い。)

    

それが、主との決定的な違い。

そのままの状態が続く。

答えるまではずれる事などないと思っていた視線が不意に離れた。

「あ〜あぁ。時間切れ、かな。」

どこか遠くを見てそう言った男は再びに視線を移した。

「残念。何かおもしろいことがわかるかと思ったのに。」

笑うその人は先ほどまでの殺気を微塵も感じさせず、またね、と言うと去っていった。


その姿が視界から消えたと同時にの体は力を失い地面へと倒れこむ。

が、その直前に温か腕がを支えた。

!?What doing!?」

   その声に

   温もりに

   蒼色に

の中でせき止めていた何かが溢れた。

「つっ、ふっ・・」

溢れてくる涙を止められず、しゃくりあげる。

それに一瞬驚いた政宗だが

すぐにを抱きしめた。

「Sorry.あんたを一人にするべきじゃなかった。」


耳元で話される言葉は決して不快ではなく。


むしろ、

(心地よい。この人はこんなに安心できる・・・。)

政宗はの涙が止まるまでずっと抱きしめていてくれた。





















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