ドリーム小説







BASARA29





  「 各国に動きが見られます。 」



その言葉を聞いたのはが毒に倒れる前だった。


「武田が動きます。近々川中島で上杉と一戦を交えるとのこと。」



そして今再び聞いたそれは、この乱世がゆっくりと動き始めたという証拠。



「OK.小十郎、人を集めな。Partyのstartだ。」

政宗はその整った顔に笑みを浮かべて言った。





「相手は武田に上杉!戦場は川中島!出立は2日後!Are you ready?!」



「Yea「お待ちください!!」」



その声と同時にバシンと大きな音を立てて襖が開かれた。

政宗の一方的な説明に伊達軍の兵士たちが答えようとしていたときだった。

驚きに振り向いた彼らの目に映るは一人の男性。

伸ばした黒髪を首の後ろで一つにくくった糸目の男。

柔和な顔つきは平時であればたいそう綺麗であろうが、今は静かな怒りが込められている。



その男、名を鬼庭 綱元(おにわ つなもと)という。



「Hey!戻ったか綱元!」

込められた怒りに気づかぬはずはないというのに政宗は陽気に声を掛けた。

「・・・殿、あなたというお方は、私がここにいないうちに戦を始めようとでも言うのですか?」

「Ha!綱元が帰ってくんのが遅かったんだろ?俺はもともと言ってたはずだぜ」

綱元はその言葉に脱力したように溜息をつく。

「解ってはおりますが・・・。まあよろしいでしょう。」

そう言うと綱元はその場に座り込むと深々と頭を下げて口を開いた。

「・・・伊達政宗様が家臣鬼庭綱元。殿の命によりこの地に戻ってきたしだいでございます。」

すっと、顔を上げ真っ直ぐに自分を見つめるその瞳に口の端を上げ政宗は答えた。

「OK.話を聞こう。・・・お前ら明日もう一度軍議を開くそれまで体調perfectにしとけよ?」







この伊達には伊達三傑と呼ばれる者たちがいる。



 武の伊達成実

 智の片倉景綱

そして

 吏の鬼庭綱元



彼らは政宗がこの城において最も信頼するものたちであると同時に政宗と共にこの乱世を生きることを、忠誠を誓ったものたちである。



その綱元がこの城にいなかったのには理由があった。

「殿。まずは北の一揆についてでございます。」

北の一揆。

それは政宗の記憶にも新しい。

がまだ来る前のこと。

政宗が治める最北端にある村で一揆が起こった。

その一揆の首謀者はまだ12歳という幼い少女であった。

原因はその土地を任せていたものが過度の重税を要求。

それに耐え切れなくなったのというもの。



結局そのものを処罰したが、やはり一揆を起こした農民にも処罰を下さなければ他のものに示しがつかない。

その処罰は首謀者であるその少女に、またその村に税をかさましするというものだった。

ただし、期間は無しにだ。



その措置のため、綱元はこの地を離れていた。

それだけではなく帰りに様々な土地に立ち寄り、政宗の領地を、各国の動きを探ってきたのだ。



それらのいくつもの報告。

淡々と進められるそれらの話を政宗は真剣に聞く。



最後にと、口を開いた綱元。

「殿・・・これは不確定なものなのですが・・・。」

「What?」

いつもきっぱりとものを話す綱元にしてはおかしな言い方に政宗は眉をひそめる。

「・・・豊臣が動いている可能性が、あります。」

「豊臣、ね。」

黙って話を聞いていた成実がぽつりと呟いた。

「・・・OK. 綱元。Thanks.」

時代の変動を明らかに示したそれらの報告を聞き終え礼を言う政宗。

それらの話を元に政宗、綱元、そこに残っていた小十郎、成実らは軍議を始めた。





(さて、のところでちょい休憩でもすっかな。)

そしてそれらの話が終わり政宗がそう思い立ちあがったとき。

「殿。もう一つお話がございます。」

「Ah〜What?綱元?」

その声に入り口に向かっていた政宗は振り返った。

そこにはいつもどうりにこやかな笑みを浮かべる綱元。

(・・・なんか、すげーdisgusting〈嫌な〉予感がする・・。)

「縁談のお話が来ておりま」

「Suit!その話は必要ねぇ。」

綱元の話が終わらないうちに政宗は返事を返す。

「殿!」

綱元の怒声をものともせず政宗はそれさえも遮る。

「綱元。俺はこの世界を、俺の手で一つにするまでは、そんなもの持たないと決めてんだ。」

そう答えた政宗に返したのは綱元ではなく小十郎だった。

「・・・政宗様。お忘れなされるな。・・・はこの世界のものではありませぬ。異世界のもの。我らとは世界が違います。」

「っ、何でそこにが出てくんだ?小十郎。」

「だって、梵、ちゃんのことすごく気にかけてるしね。」

政宗のどことなく硬くなった声。

それを肌で感じながらも成実は笑顔で小十郎の後を引き継いだ。

「Ha!そんなのいちいち言われなくても解ってんだ。・・・はこの世界の俺らの世界の人間じゃねぇ。」

話についてけず首を傾げる綱元に目もくれず政宗は部屋を出て行った。



庭に目を向ければ激しい雨。



(そう、そんなこと、解ってんだ・・・。)

は異世界のもの。

本当なら政宗たちの世界と交わるはずはなかった。



 い つ い な く な る か も わ か ら な い



そんな不安定な存在。



でも、

(今、あいつはここにいる。)

それは事実で、確かなことで。



むしゃくしゃする感情をもてあまし、城内をうろつく。

あてもなく彷徨っていたはずなのに気づけばそこにいた。

(解ってる、はずだってのに。)

苦笑をもらし襖にかけた手を、思い切り引き開ける。

「!」

驚いた気配と共に向けられる一対の瞳。



その瞳が自分を映していることにどうしようもない感情に捕らわれる。



(こいつは、今ここにいる。)



思わず伸ばして掴んだ腕。

 

 自分とは違う柔らかさに

 

 簡単に折れてしまいそうなそれに

 

 確かに感じる温もりに

 

 掴むことができたという当たり前な喜びに



溢れ出る思いを必死に閉じ込め、引き寄せそうになるその体を押しとどめ、その掴んだ腕と共にその場所を抜け出した。















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