ドリーム小説
BASARA31
「戦が始まる。」
その言葉はの頭にゆっくりと浸透していった。
政宗の腕の中でひとしきり泣いた後、政宗と城へ帰った。
何故あそこにおいていったのかは教えてもらえなかったが。
城に着いたときに、今夜部屋に来てほしいといわれたため、はその通りに夜政宗の部屋へと向かった。
そこで告げられたそれは、この世界では当たり前のこと。
今までがあまりにも平和だったから忘れていた、それら。
それは確かなことで、でも、の世界では考えられないこと。
この世界での現実。
の体が恐怖に強張る。
声が震える。
持っていた湯飲みを落とさないようにとぐっと握る。
俯いたまま声を絞り出す。
「っ、い、つですか・・・」
「二日後だ。」
(そんなに早く・・・)
は未来の世界から来たと言っても、歴史にそこまで詳しいわけじゃない。
たとえ、戦いの場所を聞いたところで、その結果は解らない。
「。」
黙り込んだに政宗は口を開いた。
「お前の世界では戦はなかったんだろ?」
それにそっと顔を上げる。
「これから俺はこの世界を統一するために幾度も戦を繰り返すだろう。そして、そのたびに多くのものが命を落とす。」
ゆっくりと告げられるそれらの『 真実 』にの瞳は揺れる。
「それがこの世界だ。お前の世界とはまったく違う。」
政宗の顔には表情と呼べるものが見つからない。
「お前はそれを、受け入れられるか?」
政宗の鋭い隻眼がを射抜く。
その瞳はあまりに、純粋。
ただ、何を押し付けることもなく、真実を告げるだけ。
けれども揺れていたの心を落ち着かせるには十分で。
一度目を閉じ、はそっと息を吐く。
ゆっくりと開いた目に、迷いは、ない。
「わかりません。私はこの世界でこうやって生きてきました。けれども、”戦”を知りません。
持っているのは無意味な知識だけです。
戦は命が奪われるもの。それだけは解ります。」
そこまで言って、は一度躊躇うように口を閉ざした。
そして再び政宗を真っすぐと、見た。
「・・・政宗様・・・。ちゃんと、帰ってきてください。」
飾り気のないそれは、にとっての本当の思い。
「怪我をしないでください、といっても、政宗様は無理をするだろうから・・・。ただ、帰ってくることを、ここで、待っています。」
発した言葉を政宗はただ無表情で受け止める。
だが、隻眼を恐ろしいとは思わない。
その瞳に呑まれることなど恐れはしない。
そして、少しだけ笑い告げる。
「私は政宗様がいないと、ここにいる意味がないのですから。」
その言葉に政宗はふっと笑い、を抱き寄せた。
そして耳元で囁く。
「必ず戻る。信じて待ってろ。」
その言葉に強張った体が緩む。
声が
温もりが
その腕が
それらの全てがを安心させる。
戦が始まるということは、忙しいはずなのに、それでも彼はに直接教えてくれた。
それはがこの世界で、政宗にここにいることを許されているのだと感じさせた。
そっと腕を政宗の後ろに回し、その胸に体を寄せる。
政宗の体がびくりと揺れるが、すぐに強い力で抱きしめられる。
「俺を、信じろ。」
「あなたを、信じます。」
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