ドリーム小説
basara34
政宗が戦に出てから早1週間がたった。
最小限の軍人、女中しかいないこの城はあまりにも静かだった。
「。そこの掃除が終わったら今日はもう良いわ。」
「・・・解りました。喜多様。」
女中であるの仕事。
それは主たちがいなくても、することは大して変わらない。
朝起きて、政宗の部屋の掃除。
次いで布団を干す。
自分の部屋を掃除して、後は皆と同じ仕事に戻る。
そう、大して変わらない。
ただ、政宗のもとに食事を運び下げることがなくなっただけ。
ただ、話しかけてくる主が不在なだけ。
以前よりも邪魔が入らなくなった分だけはかどるはずの仕事。
なのに、
胸に宿るは喪失感。
決して失ったわけではないのに、帰ってくると約束したのに、消えない不安。
他のものたちは心配をしながらもいつもと同じように日々をすごしている。
なのに、
(なのに、私は・・・。)
『初めてのことだから仕方がない』
喜多を始めとする様々な人たちに言われたそれら。
けれども違う。
これは、
甘え、だ。
彼らを心配してここにいるということを、まるで見せ付けているかのようなそれら。
「喜多様。また何かありましたら呼んでください。」
「ええ。解ったわ。・・・でも、今日はもう良いから休みなさいな。」
「・・・ありがとうございます。」
「まさむねさま・・・。」
政宗が預けた短刀を眺める。
光に照らされたそれは輝きを放つ。
本当ならなんかがもっていいものではない。
それでも政宗はこれをにわたした。
「ばかだなぁ。私は。」
ぽつりとつぶやいたそれは誰に聞かれることも無く。
形として表されたそれに決して不安がる必要など無いのに。
あまりにも不確かであった感情は、こんなところで暴かれて。
本当は戦になど行ってほしくは無く、声の限り引き止めたかった。
あの笑顔が最後になるのではないかと危惧したに、それらを知ってるかのようにわたされた、短刀。
それが今を苦しめる。
いつかは帰るであろう自分はこんな思いを持つことなど許されはしないというのに。
「私がここにいるのは、政宗様を支えるため・・・。政宗様の先を妨げるものとなることは、許されない。」
(・・・否、私自身が許さない。)
それは以前紀伊たちに言った言葉。
けれども今それが当てはまるのは彼女らではなく自分。
顔に浮かぶは嘲笑。
無いとわかっているその姿を探すのは、愚かとしか言いようが無い。
明日には、明日には、そう思い日々をすごす。
それは、そう、この世界に来たときと同じように。
空は赤く、主はいまだ姿を見せず。
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