ドリーム小説
basara35,5
3週間ぶりの彼女の姿に思わずほころんだ頬。
本当に手遅れだと自覚する。
おかえりなさいと、心のそこから安心したような笑顔で言われて、戦によって高ぶっていた心が鎮まる。
ただいまと返し、馬上からその頭を撫でる。
久しぶりの再開にその傍に行きたいのはやまやまだが、まだ戦についての話し合いが残っている。
できるだけ早く終わらせて彼女の元に行こう。
「あの時、介入したのは十中八句豊臣でしょう。最近水面下で動いているという情報も少ないながらもありましたから。」
張り詰めた雰囲気の中告げられた綱元の言葉に回りはざわりと揺れる。
そういえば、小十郎と成実、綱元以外はこのことを知らなかったかと、頭の隅で考える。
「黒脛巾組の情報によると、甲斐の虎、軍神ともに重傷。動ける状態ではないということです。」
続けられた小十郎の言葉にざわめきはさらに広がり。
「Shut up!」
響く声にその場が鎮まる。
そこにいるものたちは一様に政宗を見た。
「甲斐、越後、共にTopが消えたんだ。これで、天下へと近づいた・・・そうだろう?」
周りを見渡し一人一人の顔を見る。
「豊臣も、魔王のおっさんも、これから倒していけばいいだけだ!OK?Guys?」
「いぇす、だ!梵!」
成実の小拙い異国語に笑い再び口を開いた。
「天下は俺のもんだ!!Are you ready?!」
「Year!!」
結局軍議が終わったのは夜のこと。
に後で来るように伝え部屋に戻る。
「旦那様。」
襖を開けたそこにはいつかの女。
艶やかなる美貌は暗闇の中さらに美しく神秘的に揺らぐ。
笑みをたたえた口元は柔らかな弧を描く。
部屋に入り襖を閉め机の前へと移動する。
それに女の笑みは広がり、座った政宗に近づいた。
「報告。武田に動きあり。虎の若子が近々奥州に来る。・・・正体不明のやつを連れて。」
その口からこぼれたるは、甘い声でも囁きでもなく、ただの報告。
「・・・あの猿もか?」
「おそらく。」
「解った。」
短く交わされたそれらに気づくものはいないであろう。
「・・・すまねえな。このせいで本職に戻れなくて。」
「かまわない。あのこのためならば。」
ただ、と女は続けた。
「に心配かけんな。あの子はあたしの可愛い妹分だ。ないがしろになんかしたら許さんよ?」
ぴくりと反応をしてしまうその名に女は楽しげに肩を震わす。
「何笑ってやがんだ。」
「あの子、すごく心配してたんだ。今回ので、参ってるところもあるだろうから、ちゃんと気にかけとけよ。」
主にかけるものではないであろう言葉に政宗は苦笑する。
女が突然襖へと顔を向ける。
それに一瞬遅れ政宗の耳が足音を捉えた。
聞きなれたその軽い音に顔がほころぶ。
さて、と声を出し、女は立ち上がった。
そして襖の前で振り向いた。
「あの子、毎日あんたの渡した短刀抱えて寝てたよ。」
そんな発言を落とし、女は去っていった。
に入室の許可を与えたものの入ってこない。
促すと複雑そうな顔で入ってきた。
とりあえず、今はこの3週間のことでも話すか。
それで少しでも彼女が安心できるのならば。
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