ドリーム小説











basara36






『政宗様、短刀を『まだ持っててかまわねぇ』・・・はい。』


帰ってきたら返せと言われた短刀はいまだにのもとにある。

それは、再び戦を感じさせるものなのか、それともを安心させるためなのか。

は前者ではないかと漠然とそう思っていた。

実際、主やその側近たちは最近部屋に籠もり話し合いをすることが増えている。


政宗が帰ってきてからのこの1週間。

がそのそばにいれたのは帰ってきたその日だけである。


(あの綺麗な人は政宗様の・・・)

その日のことを考えると無意識に浮かぶあの女性。

どこをどう頑張ろうと勝てないことは明白で。

政宗様もああいう人がいいんだろうな・・・。


(・・・なんてこと考えても、結局私は政宗様の傍にずっといれるわけじゃないのに・・・。)

庭を箒で掃きながらそんなことを考えていた。

。」

「!政宗様?話し合いのほうはどうなさったのですか?」

溜息をつきかけたところに聞こえたのは今思っていた人物で。

「今ひと段落着いたとこだ。・・・に頼みがあんだが、いいか?」

「何でしょうか?」

驚きながらも政宗がいることで弾む心を抑えながら言う。


「実はー「こちら奥州筆頭伊達政宗殿の居城とお見受けする!某は上田城が城主、真田源次郎幸村と申す!甲斐の虎武田信玄公の命により こちらに参った!政宗殿との面会を望む!」・・・来やがった・・・。」


政宗の声を遮って、聞こえたのは城全体を揺るがすかのような大きな声。

凛とした響きを持つ言葉の示すところは政宗を求めるもので。

大きく溜息をついた政宗はその声の方向を見てに問うた。

。クッキーあるか?」

「今日は作ってないです。」

「Ah〜今から作れるか?」

「多少時間はかかりますが・・・。」

「OK.じゃあ頼む。・・・あいつらの茶菓子としてだしてぇんだ。OK?」

「Yes.My ser.」

短い、目を合わせない会話にの胸はつきりと痛んだ。

「仕方ねぇ。あいつのところに行って来る。」


溜息をつきつつもどことなくうれしそうな雰囲気だ。

微かに口の端を上げ、挑戦的な目をしている。

(かっこいい、なぁ・・・。)

思わず思ってしまったそれにはたと、動きを止める。

(だから、こんなこと思える立場じゃないのに・・・。)


声が聞こえた門の方に向かう政宗の姿を見送るの背中に声がかけられた。

ちゃ〜ん。」

同時に感じた背中への重みに体が揺れた。

「・・・成実、様・・・重いです。」

「あの真田幸村だよ〜。やっぱり来たんだねぇ。」

真田幸村。

日の本一の武将とたたえられた武士。

その勇ましいとされる戦歴は今も名を残すにふさわしいものだとか。

あとは、真田十勇士という最強の忍集団を持っていたということくらいか。

がもっている真田幸村という人物についての批評はそれくらいである。


(役にはたたないけど・・・。)

後ろに首を回し、成実を視界に入れ言う。

「クッキーを頼まれました。」

「ああ、あいつも、綱に劣らないくらいの甘党だからね。くっきーいっぱい作ってやんなよ〜。」


そう答えにぱりと笑う成実。

それは、真田幸村に対してそこまで警戒していないということ。


「さて、俺も行ってくるね〜。ああそれと、くっきー持ってくるのは喜多に頼んでね?」

「?喜多様にですね?」

「うん。よろしく〜!」

理由はわからないが言われたそれに頷いて、は成実を見送ると炊事場へと向かった。




私はここにいるべき人間ではない。

いつかはいなくなる存在。

解っているのに心のどこかで納得できない自分がいた。


















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