ドリーム小説









BASARA39








「うわー・・・。すげー降ってきた・・・。あいつにあやまっとかねえとな。というか無事に帰れたのか?あいつ。」

窓の外。

突然降り出した雨。

さらには響きだした雷に巴夜深は苦笑いを浮かべる。

脳裏に浮かぶは大事な生徒兼従姉妹。


日直がサボってどうしようかと周りを見渡したときに不運にも巴夜深と目があったその少女に全てを押し付けた。

何だかんだ言って、ちゃんと仕事をこなしてくれる彼女に任せれば間違いは無いのだ。


だが、今日の量はすごかった。

まじめにやっても、結構な時間がかかるだろう。


ぴかり ごろごろ

比較的近くに落ちたのか、まばゆい光と共に地面が揺れる。

「・・・マジで帰れたんだろうか・・・。・・・しゃあねえ。帰りに寄ってみっか。」


ある家の前。

車を止め呼び鈴を鳴らす。

傘を差し、煙草に火をつけ待つ。

ぱたぱたと中から走ってくる音。

がちゃりと開いたドアからひょこりと出てくる顔。

「よっ。灯兎。」

「巴夜深にい!!久しぶり!どうしたの?」

そこにいたのは可愛い従兄弟。

満面の笑みでのおでむかえに頬が緩む。

頭を撫でてやれば少しくすぐったそうに体をよじる。



「あぁ、久しぶりだな。ちょいにようがあってな。・・・帰ってるか?」


それに灯兎の顔が不思議そうなものに 変わった。


「・・・巴夜深にい。、って、誰?」

おもわず、灯兎の顔を凝視する。

「・・・は?」

「・だから・・って、誰?」

煙草の灰が落ちた。

首を傾げる灯兎に嫌な予感が背中を駆け巡る。

「誰って、お前、の姉だろうが。」

きょとりと首を傾げ、灯兎は

    笑 っ た 。

「何言ってんの?にい。僕は、一人っ子、だよ?お姉ちゃんなんていないよ?」

告げられた言葉は、あまりにも残酷で

「何、言ってんだ?」

「それ僕の台詞だよ。巴夜深にい、誰と 

           間 違 っ て る の?」


「冗談、だよ、な?」

「?冗談かと聞かれても、本当に僕は一人っ子だったでしょ?」

頭が混乱する。

まてまてまてまて

何故、灯兎はがわからない?

何故、灯兎はを覚えていない?

困惑した雰囲気の中新しい声が聞こえてくる。

「あら、巴夜深くんじゃない。」

「あっ、ご無沙汰してます、おばさん・・・。」

それは、灯兎の、の母親で

「教師の仕事はどう?大変でしょう?」

理解できない。

「何、言ってるんです、か?俺は、の担任ですよ?何度か、担任として、会ってるでしょう?」

何故この人も、を知らない?

解らない?

「え・・・?・・・ごめんなさい、巴夜深くん。って、誰かしら?」


じめんがくずれるかんかくがした

煙草が地面に落ちた。

「冗談やめてくださいよ、おばさん!はあなたの娘でしょう?!」

「冗談、と言われても、あなたの言っていることが解らないのだけれど・・・?」

「つっ!」


頭の中で警鐘が鳴り響く。




車に積んである名簿を見る。

そこにある電話番号に掛ける。


帰ってきたのは知らないと言う言葉ばかりで。



そして、

  その名簿の中に、


   と 言 う 名 前 は 無 か っ た 



『 巴 夜 深 に い 』



ここに彼女はいないのか

 はたまた俺がおかしいのか


答えを知る術を俺は持たない。















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