ドリーム小説


















BASARA 4









 
「梅。ひさしぶりですね?元気にしていましたか?」

 ここの生活にも慣れ、着物も梅のチェック無しでも着られるようになった頃、梅の姉だと言う人物が、甘味屋を訪れた。

「喜多!うん久しぶり!私はこのとおりよ。そっちも元気してた?」

上品な挨拶に入り口を振り向けば、梅とそっくりな人物がそこに立っていた。

駆け寄っていった梅と並ぶとまさに瓜二つだ。髪形と着物をそろえれば見分けがつかないだろう。

(梅さんより少し雰囲気が柔らかい・・・かな?)

そんなことを考え2人を眺めていると、視線に気づいたのか喜多がふとこちらを向いた。

そしてゆっくりと会釈をしてきたのでも慌ててお辞儀を返した。

そんな喜多とに梅は笑って、の紹介をした。



「喜多。この娘は。この間からここで住み込みで働いてもらっている!」

「はっ、初めまして!と申します!この間から梅さんにお世話になっています!」

梅の紹介によって、こちらに向き直ったは喜多には先ほどよりも深くお辞儀を返す。

「初めまして。喜多、と申します。ここにいる梅の姉でございます。こちらで働いてくださっているとのことで・・・。ありがとうごさいます。」

深々と頭を下げる喜多には慌てて言う。

「そっ、そんな!こちらがお世話になっているのです!行くところのなかった私を助けてくださった梅さんには、感謝してもしきれません!」

顔を上げた喜多は、そんなの姿を微笑ましげに見つめる。

その視線にいたたまれなくなったかのか、は梅へと話しかける。

「梅さん、喜多さんと久しぶりなのでしょう?お店のほうは私が見ていますから、お二人で話しでもしてきてください。」

「だが・・・。」

の提案に少し迷うようなそぶりを見せた梅はの顔を見つめる。

「大丈夫です。今はお客さんもほとんどいませんし、何かあったらすぐに呼びますから!」

「・・・じゃあ、おねがいするな?」

がにこりと笑いそう言い放つと、梅は嬉しそうにそう言って、喜多とともに奥へと入っていった。



(・・・かわいいなぁ。梅さん・・・)

いつもは大人っぽくて、にとってお姉ちゃんと言う感じのする梅。

その梅があんなにうれしそうに笑い、話しているとすごくかわいらしく見える。

そんなことを思い、今新たに来たお客さんに『いらっしゃいませ』と声を掛けた。





二人が、奥に入ってどれくらい経っただろうか。

そんなに多くのお客が来ない時間帯なので、は比較的ゆったりとすごしていた。


』、と呼ばれた自分の名に振り向くと梅と喜多があいかわらず綺麗に微笑みながら立っていた。

「お話はもういいのですか?」

そう尋ねたに梅は少し寂しげにそして、喜多は少しこまったような笑みで答えた。

ちゃんすこしお話しましょう?」

きょとんとした表情を見せるに梅はお客のいないお店の片づけを始めた。

「・・えと?梅さん?」

「今日はあまりお客もいないからね。少し三人で話そうか?」





ちゃんさえよければ、城で女中として働きませんか?」

店の片付けを終え奥にある土間に座りお茶をすすりながら、喜多はに尋ねた。

「・・・へ?・・・」

突然の申し出にはわけがわからず奇声を発した。

そんなにくすくすと笑いながら、喜多は続ける。

「私は、外に見える米沢城で女中として働いているの。最近女中が何人か辞めてね、人手不足で困っているの。」

そこまで言うと喜多は笑いを抑えまっすぐとを見つめて言った。

「・・・梅に聞きました。あなたの記憶のこと。名前以外解らずに森でさまよっていたと。・・・城ならばここよりも、多くの情報が入ってきます。ここで働くよりあなたの失われた記憶にたどり着けるかもしれないわ。・・・もちろん強制なんかじゃないから、あなたの思うようにしてくださってかまいません。」

最後にまた微笑む。

(・・・記憶はあるけど・・・。お城で働く・・もしかしたら帰る方法が見つかるかもしれない・・・。)

記憶について二人をだましていることには罪悪感を抱くが、こんなこと話せることでもない。

だから記憶に関してはこのまま記憶喪失を貫き通すことにしている。

幸いなことに世間の一般常識も知らなかったは、演じることなどしなくても立派に記憶喪失に見えたらしく、一度もそれについて疑われたことはない。



「・・・どうかしら?」

再び問われたそれにははっとして意識を戻す。

その誘いは今のにとって現状を打破するための希望に見えた。

にすれば、何故こんなことになったのかは正直なところどうでもいいのだ。

それよりもにとっては帰れるかどうかが問題なのだ。

「・・・そのお誘いは私にとって、とてもよいものです。・・・ですが・・・」

そう言ってはちらりと梅を見る。

その視線に気づいた梅は口をつけていた湯のみをおろし微笑んで言った。

「大丈夫だよ。ここにはもうじきしたら、雇っている子が里帰りからが帰ってくる。だからお店の心配はしなくていい。の思うとおりにしたらいい。・・・まあ仲良くなれたのに離れるのは少し寂しいけどね。」

「・・・梅さん・・ありがとうございます。」

そう言うとはふっと息をつき喜多に向き直る。

(・・・少しでも元のところに戻れる可能性があるのならば・・・。)

深く頭を下げは言った。

「そのお話お受けいたします。どうぞよろしくお願いします。」




そうしては米沢城で女中として働くことになった。
























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