ドリーム小説
BASARA41
帰れない
帰れない
帰れない
母にも
父にも
弟にも
友人たちにも
もう会うことはできない
私はここでー
き え て い く
箒を持つ手がふるえる。
目の前に景色に色は無く、全てが白黒に見える。
何度も頭の中で繰り返される巴夜深の言葉に、体が震える。
ぎゅうと箒を握り締め、必死で震えを押しつぶす。
どうすればいい?
−−−−何を
どうするべき?
−−−−何が
わたしは
−−−−この世界に
巴夜深にあえたのは嬉しいはずなのに、それを上回るほどの恐怖。
繰り返される自問自答に答えは無い。
気がつくとそこは政宗の部屋の前。
無意識でここに来たことに苦笑をもらす。
(結局私はこの人にしか頼れないの・・・?)
「・・・てことは・・・・・・い・・?」
と、中から聞こえた主の声そして
「・・・。・・・ゆ・さ・・・。」
「っつ!」
いつかの女の人の声。
(いや、だ。)
どうしようもなくどす黒い感情がわきあがる。
それをなくしたくて、はその場から足早に立ち去った。
(政宗さまには、あの人がいる、のに、私はあの場所へは、いけない、のにっ・・・。)
溢れる気持ちはとめどなく、はそれを止める術を持たず。
「ちゃん?」
角を曲がったそこにいたのは、橙色の髪を持つ人。
「っつ!」
脳裏を駆け巡る、光景。
記憶。
いつかの人。
それはに恐怖を思い出させる。
「あっ・・。」
顔に浮かんだ恐怖に気づいたのだろう。
その人は苦笑してに話しかけた。
「あの時はごめん、ね?俺様も任務だったからさ、情報が必要だったんだよねぇ。」
声は飄々として入るがその顔は笑ってはいるが、本当に申し訳なさそうにするからの体からは力が抜けた。
「だい、じょうぶです。」
「あっ、ほんと?ならよかった!」
その人はほっとしたように肩をなでおろして、笑った。
「・・・あなたが主のためにやったことです。あなたは間違って無いですよ?」
それに一瞬驚いたような顔をしたその人は次いで満面の笑みを浮かべた。
「んじゃま、改めまして。俺様は、真田十勇士の長、猿飛佐助。これからよろしくねえ、ちゃん!」
手が差し出された。
「あっ、私は、政宗様付きの女中をやってます、といいます。こちらこそよろしくお願いします。」
そう言って出された手に握手しようと手を差し出した。が、
「ふぇ?」
ふわり、手を掴む前に、柔らかい温もりに体が包まれた。
「佐助・・・。お前こいつに何をしたんだ?」
聞こえてきたのは従兄弟の声で。
少しだけ声が不機嫌だ。
「俺様ちゃんに何にもしてないよ?」
「うそついてんじゃねぇよ。」
「うそも何も、ただこの地に偵察に来たときにちょいとお世話になっただけだよ?」
「・・・お世話て、・・・信用ならねえ。」
「えっ、ちょっ、酷くない!?」
「こいつは、そんな簡単に人を怖がるようなヤツじゃねえ。というよりも鈍いから、なんかされててもきづかねえことも多い。」
「え、にい。そんなことないよ!」
「それなのにこいつが怖がってんだからな。さて、どういうことだ?」
「にい、私は無視ですか?」
「あ〜・・・。「佐助えぇぇぇ!!」・・・何、旦那?」
「この、くっきーというもの、大変美味でござるうぅ!!」
テンポのいい、まるで成実と綱元のようなやり取り。間に挟まれそれを聞いていたの耳に、新しい人の声がした。
その声が響いた瞬間、二人の言い合いは終わり、佐助はどこと無く疲れたような、巴夜深はたいして動じもせず、さらにによっかかった。
「それはよかったね、旦那。で「・・・巴夜深、お主破廉恥でござるうぅ!!」・・・また遮る・・・。」
巴夜深との状態を見たとたん、幸村は叫んだ。
顔を真っ赤にして叫ぶその人を必死に止めようとする、佐助。
「・・・巴夜深にい。私、真田幸村って、もっと男らしいイメージだった・・・。」
「まあ、史実どうりだったら、そうだろうな。」
「そだ、ここは私が知っている戦国時代とすごく似てるけど、どこか違うの。」
「・・・そうだな。」
「・・・どういうことなのかな。」
「あ〜それは、まあ、な・・・。」
「巴夜深にい?」
「・・・いや知らなくていい。」
二人の言い合いを見守ると巴夜深。
その背中に掛けられた声は、にとって、もう聞きなれたもので。
びくりと体を震わせるに巴夜深は一瞬目を細めた。
「これから、軍議を始める。はまた仕事に戻っとけ。」
「・・・はい。」
それと、と言いこちらを真っ直ぐと見て、政宗は言った。
「・・・。またすぐに戦が始まる。今回も、いつ帰ってこれるかはわからねぇ。
待 っ て ろ 」
その言葉に以前のように帰すことはできなくてはただ、微笑んだ。
わたしはここにいてもいいのでしょうか
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