ドリーム小説
BASARA43
『伝令!!伊達、真田の連合軍は豊臣秀吉を打ち、勝利!しかし、伊達政宗様が重傷とのことです!!』
運び込まれたその人は身にまとう衣のように蒼い。
血の気がないその体はぴくりとも動かない。
いつも浮かべる不適な笑みも今は姿を見せることなく。
その強い瞳は閉じられたまま。
「ま、さ、むね、さま」
体がすくむ。
その姿を見て、これはどこか夢だと言い聞かせている。
けれども、これは、現実で。
運ばれた部屋。
そこは政宗の部屋。
傍にいるのは伊達三傑、幸村に巴夜深、そして。
医者は先ほど治療を施すと、薬を作るために部屋を後にしていた。
暗い雰囲気の中だれもが政宗を見つめる。
「某がもっと早く気づいていれば・・・。」
申し訳なさそうにその場に座り込んでいた幸村はそう口を開く。
どうやらこの政宗の怪我には幸村が一枚かんでいるらしい。
だが、に詳しい話が伝えられることはなかった。
それは一介の女中に対しては当たり前の判断。
それでも、知らされない、その事実がの中を深くえぐった。
「幸のせいではありません。これは、政宗様自身の失敗によるものです。」
非情にも告げるは、伊達三傑の一人、綱元だった。
それに反論を返すかと思われた小十郎も成実も何も言わない。
綱元の言葉が本当のことだとわかっているからか。
政宗から目を離さないまま口を開いた。
「大丈夫。梵はちゃんと目覚ますから。」
それはまるで自分に言い聞かすかのように。
けれどもその目は翳りなく信じていると一心に告げていて。
その瞳には心が少しだけ凪ぐのを感じた。
ひゅ、と空気が揺れた。
それに気づき目を鋭くしたのはその部屋にいた以外の人物たち。
「あはーごめんね。・・・旦那報告だ。」
その場に似合わない雰囲気の持ち主に小十郎が顔をしかめる。
それを気にも留めず、幸村の前に跪いた佐助はその場にいる人物に聞こえるよう口を開く。
「偵察にでていた部下から報告が。・・・豊臣の軍師竹中半兵衛の生存を確認。」
それにざわりと空気が揺れた。
それが何を示すことなのかわからないけれども。
「急ぎ、軍議を!」
すぐにその声に従い動き出す面々。
「。政宗様のお傍に。」
「は、い」
小十郎の声が、人の減っていくこの部屋に響いた。
そうしてこの部屋にいるのはと巴夜深だけになった。
巴夜深は何も言わない。
は政宗のすぐ傍に座り込みじっと起きない主を見つめる。
怖い。
この人がいなくなってしまうことが。
早く。
目を覚まして、いつものように名前を呼んで。
お願い。
「。」
黙っていた巴夜深が口を開いた。
「・・・」
「。」
答えを返さないに再び声を掛ける。
二度目のそれにようやっと巴夜深へと顔を向ける。
その瞳は揺れ、今にも雫を落としそうで。
それでも、決して泣くことはしない。
泣けば取り返しのつかないことになりそうだから。
「。ずっとそうやってるつもりか?」
「・・・。」
「そうやってれば、政宗公は目を覚ますのか?」
「・・・そんなわけ、ない・・・。」
巴夜深から目線を外して答える。
「なら聞く。お前が今すべきことは何だ?」
「お前に今できることは?」
「・・・。」
はあと大きな溜息。
そして告げられるは事実。
「この世界ではこんなこと日常茶飯事だ。」
それにぐっと溢れそうになる涙をこらえた。
そんなの姿に巴夜深は追い討ちをかけるように、言った。
「政宗公がいなくなればお前は、この世界に居残る理由はなくなるのか?」
それに目を見開くとは自らの体を政宗と巴夜深の間に入れた。
(今、巴夜深にいはなんて・・・?)
その目には恐れが浮かぶ。
「政宗公がこのまま目を覚まさなければお前はどうするんだ?」
先ほどよりも幾分かのやらかさを含んだ声にの体は知らずに緩む。
けれどもそういって続けられた言葉には再び体を堅くした。
「俺が聞きたいのは、お前の意思だ。この世界に残りたいのか帰りたいのか。」
※※※
幸ってよんでんのは綱元です。
綱は中だと認識した人間には、とことんやらかくなります。
幸って呼ぶのもそのせい。
というか呼ばせたかっただけだったり。
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