ドリーム小説
BASARA44.5
何故あの時政宗様の後を追わなかったのだろうか。
今となっては後悔の念だけが浮かぶ。
いつもと同じように主はじっとすることはなく、真っ先に敵に陣営へ乗り込んでいってしまった。
こちらもいつもと同様にその後を追おうとするが、敵兵に阻まれる。
こんなことをしている場合じゃないというのに、敵兵は減らず。
「Hey!小十郎!ここは任せた!!」
そんな声が聞こえてきてしまったらもうそれに答えるしかなく。
「お気をつけて、政宗様!すぐにまいります!」
とりあえずはここを通すわけにも行かないので、その場所で敵兵を蹴散らす。
いつの間にか成実も傍にいて。
「成実!!ここは任せた。俺は政宗様のところに行く!」
「解った!小十郎、梵を頼む!」
ここに成実がいるのならば自分は政宗のもとへ。
そう思い成実に告げると主のもとへと向かう。
その瞬間聞こえたときの声に、大きな安堵が訪れる。
(さすがは政宗様だ。)
「さっすが、梵!!」
成実の心の底からの賞賛に小十郎も同意する。
刹那
目の前を赤いものが風のように走った。
それは真田で。
それを先導するのは忍で。
向かう方向に、その緊迫した様子に背筋が冷えた。
すぐさま走り出した小十郎に成実も続く。
嫌な予感がする。
「っ、政宗殿!!」
聞こえた真田の声に血の気が引いた。
「政宗様!?」
「梵!!」
倒れている主に、浮かぶ血溜りに、世界が音をなくした。
(おかしい)
豊臣との戦。
違和感の正体はすぐにわかった。
豊臣の軍師である竹中半兵衛がいない。
たしかに以前の情報ではこの戦に参加するはずだったというのに。
上空から探すも、その姿は見られず。
襲い来る敵を残らず殲滅し向かうは主の元。
時の声が聞こえて、わが軍の勝利が判明する。
(お早いこって。)
軽く溜息を吐くと旦那の元へ着地する。
笑みを浮かべて無事だったかと尋ねられることに本当にこの人は忍を何だと思ってるのかと思う。
不意に一瞬だけ感じたもの。
言葉にするなら、ただの勘。
けれども無視するには大きすぎるそれ。
「旦那、早く独眼竜の旦那のとこに行ったほうがいい。」
すぐさま旦那と共に向かう豊臣の本陣。
たどり着いたそこにあったのは血を噴出し倒れ行く竜。
そして一人の忍と軍師。
すぐにその場を離れた二人を追う。
生半端な速さではないそれら。
佐助自身も相当の速さで走っているがなかなか追いつけず、暗器を投げる。
それもすぐさまはじき返され、相手が相当の手だれだとわかる。
と、一瞬の隙をついて打ち付けられた煙だまに視界を奪われる。
「ちっ!」
舌打ちをして忍術を使いすぐに視界を取り戻すがすでにそこに姿は無く。
「くそっ。」
微かに感じた感覚は、あの少女たちと酷似していて。
まさかと頭の隅で考える。
厄介な相手がでてきたものだ。
そう思うと佐助はあたりを探るよう部下に命じる。
彼女は泣くのだろうか。
あのときのように?
不意によぎった考えを頭の隅に追いやって、主の元へと向かった。
back/
next
戻る