ドリーム小説








 BASARA45








何故、巴夜深の言葉に即答できなかったのか。

どうして、帰るという言葉に、体が震えたのか。

どうして、

私は

 こ ん な に も 動 揺 し て  い る の か


繰り返される自問自答。


答えはいまだ、みつからない。



政宗が傷つき眠ってから数日が過ぎた。

医者によれば、峠を越えたとのこと。

あとは、政宗様が目覚めるのを待つだけ。

その目覚めの兆しは見られないが。

この政宗の部屋にいるのは今だけである。

小十郎たちは連日の軍議でほとんどこちらに顔を見せれていない状態だ。

幸村、巴夜深はこの軍議に参加。

そして佐助は情報収集に奔走している。

は常に政宗の傍にいる。

それは小十郎や成実、綱元に喜多たちから命じられたの仕事となっていた。

日差しは暖かく、そして柔らかい。



そんな日のことだった。



ざわり辺りが揺れたと思えば今まで見ていた政宗の姿が見えなくなった。

代わりに見えるは茶色いろした天井。

そして顔を隠した一人の人間だった。

「・・・な、に・・?」
「はっ。遅い反応ね、。」

発された言葉は聞いたことのあるもので。

でもすぐにには記憶と結びつかない。

「あな、た・・っ」

再び口を開いたと同時に感じた痛み。

それは今しがた微かに動いた首。

ひんやりとした感覚を感じるのになぜか熱い。

(・・・くび、きれた、み、たい・・・。)


呆然とした頭はいまだ現状を把握していないことを示唆していて。


「さて。私の目的はあんたじゃないの。」

そんなことは言われなくても解っていた。

この人の目的は確実に

(政宗様だ。)


「そちらでぐっすりとお眠りになさっている、独眼竜・・・政宗公よ。」

そう告げた顔は口の端を微かに上げてをみる。


「だから、あんたに構ってる暇はないのよ。」

そういって浮かべた笑み。

頭の中で記憶が逆流する。

(おもいだした)

「す、みれ、さん・・?」

それに微かに目を細めその忍、菫は答えた。

「あら?覚えてたんだ。てっきり記憶から排除していたかと。」


そのひとは以前この城で女中として働いていた人でにとてつもない嫌悪を抱いていた人で。

政宗に毒を盛ろうとした人で。


「ど、して・・」

思わず漏れた声に菫は愉快そうに顔をゆがめて。

「主の命よ。」

そうとだけ言った。

「な、ん」

その言葉が言い終わる前にの顔のすぐ横に鋭い刃物が刺さっていた。

刃が触れたところが熱い。

菫はそれを先ほどとは一転した無表情で見つめていて。

「痛いでしょ?これが皮膚を切られる痛みよ。」

その瞳に映るは虚無。

ただそこにあるだけ。

再び振り下ろされた刃に体がすくむ。

今度は首のすぐ上に。

身じろぎすれば切れてしまうであろう距離。

「あ・・・」

何もいえないに菫は顔を近づけて言い放つ。

「初めてでしょう?こんな風に刃物をつきつけられるのは。」

「・・・す、み」

の声を遮るように放たれた言葉は驚くもので。


「あんたにわかる?いきなりこの世界に飛ばされて、わけもわからぬままで、存在理由を手に入れるためだけに忍へと身を落とした時の気持ちが。人を殺せなければここにいる必要はないと切り捨てられそうになった時の恐怖が。光だと思って手を伸ばしたところは闇よりもさらに深いところだったときの絶望が。あんたみたいに助けてくれるものもいなくて、ただただ人に怯え暮らしたときの孤独が。」


「ま、さか、すみれ、さん・・」

「ねえ、何で?なんで、あんたと同じ世界から来たのに私と違って、この世界はあんたを受け入れているの?」


ようやく納得した。

何故彼女がばれる可能性が増えるのにわざわざにも毒を盛ったのか。

こんなにもこの人がを嫌悪する理由が。

菫の姿はだったかもしれない。

菫のようになっていたかもしれない。

それは運なんて言葉では言い切れないほどで。

何故と言う言葉に答えは告げられなくて。

の命は菫の手の中にあると言うのに、それを怖いと感じれなくて。



  まるで、母を捜す子どものようで


その目を離すことができなかった。











※※※※

お久しぶりに菫さんです。







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