ドリーム小説
BASARA47
キィンという澄んだ音。
それによって首に落ちるはずだった刃ははじかれて。
「ちゃん。大丈夫〜?」
軽い声。
迷彩の背中。
派手な髪。
それらから導き出す人物はただ一人。
「さる、とびさま・・・?」
「うん。そうだよ〜。俺様だよ〜。」
声は返ってくるが決して振り向くことはなく。
つむがれるは疑問の言葉。
「さ〜て、君はどこの忍かな〜?」
「答えるとでも?」
「もちろん思っちゃいないさ。でも・・・豊臣、だろ。」
「はっ。言うわけないだろ。」
それに顔を変える事もせず菫は暗器を構えたまま菫は答える。
対する佐助も飄々とした雰囲気をとかないまま話し続ける。
お互い隙は ない。
「ここの忍が寝てたのも君の仕業だよね〜?」
「どうだろうね。」
「どんな業を使ったのかな?」
「さあね。」
「俺様にもわからないうちにここに来てたのにはほめてあげるね〜。」
「そんなのはいらない。うれしくない。」
「そんな遠慮しなくてもいいのに。」
「あら。なら見逃してくれるの?」
「はっ、まさか。」
「よね。」
その言葉を皮切りに二つの影は一斉に動き出した。
それもには追い切れないほどの速度で。
一瞬呆気に取られてそれらを見ていただがすぐさま部屋の中心部で褥に横たわる政宗の傍に寄った。
そうして見えない二人から政宗を守るようにその体をぎゅっと抱きしめた。
ばたばたと誰かが廊下を走ってくる音が聞こえる。
それを合図かのように二人のうちの片方は襖を突き破り庭へと降り立つ。
すぐさまそれを追った佐助に菫は笑い何かを投げつけた。
咄嗟に口元を覆った佐助だが多少それを吸い込んだのかがくりと膝を突いた。
「猿飛様!」
思わず上がったの声とかぶって違う声が聞こえた。
「佐助!!」
「政宗様!!」
「梵!!」
「!!」
(なんて統一性のない)
混乱した頭でそんなことを考える。
破れた襖から現れたのは4人の人たち。
庭に倒れた自らの忍に駆け寄る幸村。
それ以外の3人はこちらに来て。
は抱えていた政宗をそっと褥に戻した。
それを見てほっとしているのは小十郎と成実で。
「怪我はないか!?」
近づいてきた巴夜深がそう言ってのあちらこちらを確認する。
そうして首と頬が切れてることに気づくと顔をさあと蒼くした。
「っ!首が、頬が切れてる!!」
その言葉を聞きながらは巴耶身の胸に身を預ける。
それに一瞬驚きながらもそっと壊れ物のようにその腕の中に閉じ込めた巴夜深には口を開いた。
「巴夜深にい。あの人も私達と、同じだったの・・・。」
「・・・?」
「あの人も、私達と同じようにこの世界に来てしまった人・・・。」
目の前の温もりに縋り付くようには巴夜深の胸に顔をうずめた。
思い出すのは菫の姿。
自らの存在意義を求め彷徨う彼女は利用されることを居場所とした。
彼女との会話でこんがらがっていた考えがほどけていった。
ゆっくりと顔をあげ巴夜深をみる。
そうして言った。
「巴夜深にい。私は、帰りたくない。こんな政宗様を残して帰りたくない。たとえ政宗様が他の人を選んでも、私はこの人のいるこの世界で生きたい。私は、ここにいたいの。」
そう答えはこんなにも簡単だったんだ。
その答えに、巴夜深は仕方がなさそうに微笑んだ。
軍議の途中抜け出した佐助が気になった。
佐助自らが部下のもとに行かなくても情報は入ってくるから。
何故かと思うと同時に感じる胸騒ぎ。
それはこの世界に来たときと似ていて、胸がずくずくと疼くかのようで。
(・・・?)
連想される人物は1人。
嫌な予感は消えることなく。
そうして聞こえた金属音に背筋が凍る思いがした。
幸村に小十郎、成実とともに駆けつけたそこにあったのは庭に倒れる佐助と部屋の中政宗を守るように抱え込むの姿。
「怪我はないか!?」
そう言いあちこちをみると首と頬が切れていて。
「っ!首が、頬が切れてる!!」
伝えればそんなこと気にもしないらしく巴夜深の胸に体重をかける。
その姿にとりあえずは大丈夫だと安心しその体を抱きしめれば聞こえてきた声。
「巴夜深にい。あの人も私達と、同じだったの・・・。」
「・・・?」
「あの人も、私達と同じようにこの世界に来てしまった人・・・。」
何を言っているのかと聞き返そうとすれば先に返された言葉。
つまり、今ここに来ていた刺客であろう人物は、自らと同じ世界のもの。
今、この世界に来ているのは自分達以外にもいるということ。
その後胸にがすがり付いてきた。
まるで自らを繋ぎ止めるかのように。
そうしてゆっくりと顔を上げたの瞳には強い光が宿っていた。
「巴夜深にい。私は、帰りたくない。こんな政宗様を残して帰りたくない。たとえ政宗様が他の人を選んでも、私はこの人のいるこの世界で生きたい。私は、ここにいたいの。」
その言葉に頭のどこかでやっぱりという考えが浮かんだ。
彼女が選んだのは自らの生まれ育った世界ではなく、心に思う人の入る世界。
仕方ないなあとほのかに思いながらも、が決めたことに微笑んだ。
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