ドリーム小説
BASARA52
そこは真っ暗な世界だった。
何も無い世界。
だれもいない世界。
不意に小さな声が聞こえた。
まるで忍び泣くような声。
ゆっくりとその声の方向に動き出した。
「は、はう、え・・・。」
その声の意味を悟ると同時に背筋が凍った。
これは、俺だ。
蹲るそれはかつての自分。
拒絶
嫉み
恐怖
それらに支配されていく。
侵食されていく。
気づけば自分が蹲っていて。
周りから向けられる目に恐れが、恐怖が宿る。
『 こ の 化 け 物 が ! ! 』
母親の声が蘇る。
『 お 前 な ど 生 ま な け れ ば よ か っ た ! ! 』
簡単に思い出せるそれら。
『 何 故 、 死 ん で し ま わ な か っ た の だ 。 』
その言葉たちは簡単に政宗を壊していく。
『 汚 ら わ し い 』
政宗が築いてきた世界を人々を否定していく。
『 き え て し ま え 。 』
毒がめぐる。
呼吸ができなくなる。
歪んでいく視界。
わらう女。
伸ばした手は 叩き落されて。
暗いくらいそれらに引き込まれていく。
呑まれていく。
なす術の無いまま俺はただ落ちていく。
『私は政宗様が大切なんです。だから、あなたには渡しません。』
不意に優しい光が溢れた。
それは直接頭に響くよう。
それは、それらは政宗という存在を肯定する。
『政宗様。この小十郎が傍におります。』
『あなたの背中は私が守ります。』
『お戯れが過ぎますぞ!!政宗様!』
『政宗様。世界の何者もがあなた様のことをなんと言おうとも私を、私たちを信じていてください。私たちは政宗様のためであればなんであろうと受け入れましょう。』
『初陣ってのはぞくぞくするね〜梵。』
『俺の命は生まれたときからたった一人、お前だけのものだ。』
『梵!!お前俺の饅頭食っただろ!?』
『大丈夫だよ。梵。この世界は統治者を欲している。どこまでもついてきますよ。信じてます。俺のたった一人の主。』
『私をお使いください、殿。私は決してあなた様を裏切りません。』
『私の命はあなた様のものです。殿。』
『この甘味は大変美味でございますね殿。』
『もしもこの世界に戦など無かったら殿を守って死ぬなどできないでしょう。ですから私はこの時代に生まれて幸せなのですよ、殿。あなたを守ることができることが。』
『政宗様。・・・この身が元の世界へと戻るそのときまでどうかおそばにおいてください。』
『政宗様。たしかに、驚きました。そして、醜いとも思いました。けれども、私はその眼を嫌いにはなれません。その眼は政宗様の代わりに命を落としました。』
『その眼は政宗様がこの世界で生きていくためにこの世界から消えました。その代償が、その醜さならば私は喜んでそれを受け入れましょう。だって、そのおかげで政宗様は今、ここにいます。私は政宗様がここにいてくれて嬉しいです。政宗様が生きていて嬉しいです。』
『政宗様。生きていてくれて、ありがとうございます。』
霞む目にはだれもうつらない。
それでも揺らぐ景色の中微かに見えた光。
それは次第に明るさを増して。
「こじゅ、ろ、しげ、、つな、も・・・」
脳裏に浮かぶは信頼のおける家臣たち。
うるさかったり 生意気だったり 甘党だったり
それでも彼らはとても大事な 大事な存在。
『政宗様。』
「っ・・・っ・・・」
最後の光は愛しい少女。
彼女が泣いてしまう。
早く傍に行かなければ。
強く見えて儚い少女。
弱く見えてそれでいて強い意志を持つ。
その瞳の光は決して消えることは無く。
魅せられる。
意識が浮上する。
同時に感じる暖かな温もり。
安心できるその温もりに、強張っていた体はゆっくりと緩急して。
不意に
強い力で温もりから離されて。
同時に覚醒しだすこの体。
「っあ、やめてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
その声に完全に目が覚めた。
咄嗟に手を伸ばした枕元。
そこにあった刀を迷うことなく掴みとり、目の前へとかざす。
キィン
響くそれに笑いが浮かぶ。
微かに揺らぐ体を静し。
「えらく派手な目覚ましじゃねぇか。まあいい。It's a show time!」
掠れる声で告げた。
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