ドリーム小説















BASARA57




「ふむ。これはやはり不利か。」

松永久秀はそう呟くと戦場に背を向けた。

「全軍に伝えよ。撤退だ。」




事の発端は伊達、真田の連合軍に敗北したはずの豊臣軍の軍師、竹中半兵衛が訪ねてきたことだった。

『未来からの少女に興味は?』

その言葉に踊らされたわけではないが興味を惹かれたのも確かで。
最近めぼしい物が見つからず暇をもてあましていたのでちょうどよかったとも言える。

結局その軍師の望みをかなえるために手を貸そうと決めた。


なにより目を引いたのはその男のそばにいた忍
どこかおかしな雰囲気をかもし出しているその人間は

    恐らく彼が言う未来の人間。

だがしかし彼が条件に出したのは奥州にいるという娘。
それはこの忍を手放すのは軍師にとって惜しいと思われているのだろう。

その忍を条件に付け加えてもよかったのだが、奥州の竜が持つ娘に興味があったのも事実なので、この忍は放っておくことにした。






結果は敗北ではあったが、自分の土地に被害を受けたわけでもないのでそこまで悔しくもなく。
それよりも収穫としては、未来から来たであろう娘を遠目にだが見ることができ、もう1人異質な男をも見つけることもできた。

その上、城や城下の様子、警備の配置など様々な情報を手に入れることができたのだから十分である。


今のところ天下に興味は無い。
だが各地の情報を手に入れておけば何かと訳にはたつであろう。

「松永様。」

馬の上撤退の途中、頭上の木からかけられた声。
それは豊臣の軍師とその忍の後を追わせていた者の1人。
幾人かに命じたと言うのに一人しか帰ってこなかったと言うことは、他のものは伊達、真田それぞれの忍にやられたのであろう。
その証拠にこの忍も抑えてはいるのだろうが息が荒い。

先を促すよう手を上げれば、忍は再び口を開いた。
「豊臣軍師、竹中半兵衛は伊達政宗の手により重傷。止めをさされる前に忍によって救出されましたが、その後は消息不明。」
それらの報告に再び手を振って忍を下がらせた。

(ふむ。これで完全に豊臣は崩れた、か。)

そう 天下争いにはまったく持って興味はないが、おもしろきことには多大な興味を持つ。


「さてさてこれから先どのように転ぶか、ね」


にやりと笑い空を見ればそこには青い空が広がっていた。








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