ドリーム小説
BASARA7
「。政宗様の執務室に二人分の茶を頼む。」
昼の主な仕事である城の掃除を一通り終え、次の作業に取り掛かろうとするにかけられたのは小十郎のそんな言葉だった。
「政宗様の執務室に・・・ですか?」
「あぁ。頼んだ。」
がこの城で働き出し早2週間。
だいぶ城のことにも慣れてきたが、いまだに米沢城の城主でありこの奥州を統べる御方である『伊達政宗』様に会った事はなかった。
それと言うのも、小十郎があわせようとする日にかぎって、政宗は執務が嫌になり逃亡するのを繰り返していたからだ。
だが変わり・・・と言えるのかはわからないが、鍛錬や仕事の合間を縫って成実がよくの元を訪れていた。
そのためと成実は結構仲良くなっていたりする。
「政宗様がもうすぐ今日の分の仕事を終えられる。休憩のついでにお前の紹介もしておこうと思ってな。」
では頼んだ、そう言って小十郎は政宗の部屋へと戻っていった。
「やっと政宗様にお会いするのね?」
「!」
後ろからかけられた声に振り向くと、手ぬぐいで濡れた手を拭きながら近づいてくる喜多の姿があった。
「喜多様・・・。」
喜多は不安げな様子をのを見てくすくすと笑うと言った。
「大丈夫よ。政宗さまは何も怖いことなどないわ。・・さあ早く頼まれたお茶を持っていかないと。」
喜多にお茶を淹れるのを手伝ってもらい、お茶菓子も二つお盆においては政宗の部屋へと向かっていた。
(・・・どんなかたなのかな・・・政宗様は・・あの成実様がすごい人と絶賛するくらいです・・・とても素晴らしい御方だと思うんだけど・・・まぁ、会えば解るよね。)
そんなことを考えていると目的の部屋へと着いた。その場にお盆を置き正座をして中に入室の許可を求める。
「お茶をお持ちしました。」
「Ah〜。はいれ。」
1拍おいてすぐに返事が返ってくる。
それははじめて聞く声でこれが政宗の声なのか・・・と思いながら襖へと手を掛け開ける。
「失礼いたします。」
開けたそこにはたくさんの書類が乗った机が3つ。
真正面と左右に1つづつ置かれていた。
から見て左側にある机の前には小十郎が座っている。
そして真正面の一番書類が多く乗せられている机には青い着流しを着た一人の男性が座っていた。
(この人が、だて・・・まさむねさま・・・なんて若い・・・。)
その時、その男性が顔を上げた。
ときがとまった。
光にあたり茶色に見える黒髪。
すっと通った鼻筋。整った顔立ち。
そして何より一つしかない瞳がを鋭く貫いた。
その整いすぎる顔立ちは隻眼という不完全によりさらに追求した美を生み出している。
(なんて・・・きれい・・・。)
「おい。。・・・っ!」
政宗の顔を見たまま何も言わないに小十郎は慌てて声を掛ける。
が、それすらもは気づかない。
と見詰め合ったままの政宗は口の端を微かに上げ立ち上がる。
そしての前まで来てしゃがみこんだ。
そこでようやくは政宗をじっと見ていたことに気づき、慌てて頭を下げる。
「しっ、失礼をいたしました、伊達、政宗様。私は、と申します。2週間ほど前よりこちらの米沢城で、女中として働かせていただいております。どうぞよろしくお願いします!」
床に着くほどに頭を下げるに頭上からくつくつと忍び笑いが聞こえた。
「くっくっくっ・・・。それじゃ、お辞儀じゃなくて、土下座じゃねーか!」
その笑い声と言葉には真っ赤になり顔を上げることが出来ない。
「どうした?顔を上げな。」
まだ笑いのおさまらない政宗に言われてはあげないわけにはいかなくて、だがその顔を上げた瞬間、忍び笑いだった笑いがさらに大きくなりはさらに真っ赤になる。
「ぶっ、ははははは!てめー顔真っ赤じゃねーか!」
「これはっ、そのっ・・・」
笑いのおさまらない政宗と、顔のほてりが収まらないの二人を見て、小十郎は大きくため息をついた。
「政宗様。お戯れはそれくらいに。が困っております故。」
小十郎の場をいさめる言葉により、ようやく政宗は笑い終え、もほっと息をつく。
「Sorry Sorry.」
「・・・えっ・・・」
部屋に聞こえたその言葉はこの世界に来てはじめて聞くもので。
けれどもにとっては慣れ親しんでいた言葉で。
思わず声が漏れた。
それを聞き逃さなかった、政宗は怪訝そうな顔をこちらに向けて、だがすぐににやりと笑いに告げる。
「改めて。Welcome!俺がこの米沢城の城主にして奥州筆頭伊達政宗、だよろしく頼むぜ?Kitty?」
不適に笑う政宗に胸がうたれ、おもしろげにゆがめられた瞳に心が締め付けられ、そして、優しく耳に響く言葉に思わず涙が溢れた。
「!んなっ・・」
「!!」
「っつ・・・!」
驚きの声を上げる二人に目もくれず、いつもでは考えられない速さではその部屋を出て行った。
残された二人はぽかんとしていたが、慌ててを追うため立ち上がる。
「政宗様!」
そして部屋を出ようとした政宗に小十郎は声を掛ける。
「Ah?執務なら後でやる!今はあいつが泣いてる理由を知るのが先だ!」
「執務のことではありません。のことでございます。」
その言葉に政宗は今にも部屋を出ようとしていた身体を小十郎へと向け直した。
「What?のことってーのは。」
それに一度目を瞑り、小十郎は話し出す。
「あの娘は、はー・・・」
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