ドリーム小説
BASARA8
ぽろぽろと次から次へと溢れてくる涙を止められないままは我武者羅に走り続けた。
なれない全力疾走にすぐに呼吸が苦しくなる。
(どうし、よう・・。ぜったいへんにみられた・・・。はじめてあった、ひとのまえ、で、なく・・・なんて・・・。)
苦しさに歩かずを得なくなった、は俯きながら袖で涙を拭きながらそんなことを考えていた。
我武者羅に走った所為か、ここが何処だかわからない。
だが、そんなこと今のにはたいした問題ではなくて。
(わすれてた、わけじゃなかった、けど、わたしのせかい、をあらためておもいだして・・・ここじゃないんだというじじつをありあり、とかんじて・・・)
の世界では当たり前に使われていたものが、この世界じゃ使われていない。
洗濯機や、水道、コンロなど、なかったから感じなかったものが言語と言うものを媒体に押し寄せてくる。
気づかない振りをしていたことに改めて気づいて。
それなのに、の世界と同じものが使われていると言うことに喜びを感じて。
じわり、再びにじむ涙を見られたくなくて、目の前に見える綺麗に整えられた庭の茂みの中に身を隠す。
溢れ出た涙でびしょびしょになった袖をそれ以上涙がこぼれないようにとまぶたに押し付ける。
(わたしは、このしろに、きおくを、かえりかたを、さがしにきたわけじゃなかった・・・。・・・ほんとは、これはゆめで、すぐにかえれると、しんじていて、・・・しんじていたくて。ただ、へんかを、もとめて・・・。)
夜に、寝るときに明日は元に戻ってるはずだと思いは褥に潜り込む。
そして朝が来て目を開けそこに見える、見慣れてしまった風景があることに、これはまだ夢の中だと信じ込む。
自分をだます日々をは過ごしてきた。
1日経つことにの胸にふくらんでいた疑心は政宗の言葉によって破裂してしまった。
(・・・このせかい、で、なくの、は、はじめて・・・。)
どれくらい泣いていただろうか。
泣きつかれぼんやりとした頭で考えていたの耳にがさがさと茂みを掻き分けるような音が聞こえた。
その音に驚きびくりと肩をふるわせる。
(!だれか、きちゃう、こんなかおみせらんないのに、どうしよう!)
そうは思うが走りつかれ、泣きつかれたにとっさに動ける体力もなく。
目元を隠すため下を向いたの目に、誰かの足が映り込む。
「・・・。」
「・・・。」
相手は何も言わないから、も答えられない。
ただ沈黙が続く。
相手が解らないにとっては、さらに恐怖も上乗せされて。
「・・・はぁ。」
つかれた溜息にはびくりと身体を震わせ縮こまる。
その姿にもう一つ溜息をつき、目の前の人物はの前へとしゃがみこむ。
「。」
「!っつ!」
目の前に映りこんだ隻眼の男性に、呼ばれた自分の名に、恐怖と驚きと悲しみを浮かべ、は座ったままで後ずさりをする。
「。」
もう一度名を呼ばれる。
優しく響くその声はゆっくりとの心に染みこむ。
「こっち向け。」
その声にそっと顔を上げる。
政宗の左目にが映る。
(・・このひと、の、めには、ちゃんと、わたし、がうつって、る・・・。)
は、再び涙が溢れるのを感じた。
「Shit!のやつ何処行きやがった!?」
小十郎から聞いた言葉が頭の中で繰り返される。
『は、記憶を持っておりません。』
『記憶がない?・・・記憶喪失というやつか?』
『はい。1ヶ月ほど前に甘味屋の梅によって、森にいたところを保護されたそうです。』
驚いた表情をする政宗に小十郎は淡々と告げる。
『あのの突然の行動はもしかしたら、記憶に関することかもしれません。』
『Ah〜・・・つまり、俺が原因で何かの記憶が呼び起こされたってことか?』
『・・・かもしれません。』
神妙な顔付きで答える小十郎。
『・・・OK,・・・小十郎ちょいと散歩してくるわ。』
『解りました。早くお戻りください。』
『OK.OK.』
仕方なさそうに溜息を落とし、誰もいない空間に声を掛ける。
「は何処行きやがった?」
「北の庭に。桜の木の下の茂みの中に。」
「Thanks,」
誰もいないはずの空間から答えが返ってくる。
政宗は驚くこともなく城の北にある庭に向かった。
たどり着いた庭の茂みの中をがさりとさぐる。
するとそこには探していた人物が膝を抱え込んで座っていた。
「・・・。」
「・・・。」
こちらがしゃべらないからかもしゃべらない。
「・・・はぁ。」
どうしようかと溜息をつくとがびくりと身体を縮こまらせた。
(おどろかしちまった、か?)
そんなことを思いながらも声を掛ける。
「。」
「!っつ!」
座ったままの状態からさらに後ずさる。
「。」
もう一度名前を呼ぶと、張り詰められていたの空気が和らぐのがわかった。
「こっち向け、。」
その言葉に顔を上げたと目を合わせる。
そこに映るは、恐怖と驚きと悲しみで、でもそこに映る自分の姿に酷く安心した。
(こいつはちゃんと俺を見ている。)
と、の瞳の中の政宗がゆらりと揺れた。
先ほど止まったはずの涙に自身が驚き、あわてた。
あわあわと混乱するの姿に思わず政宗は噴出した。
「くっくっくっ・・・。お前の慌て方おもしれぇ。」
先ほどの張り詰めていた雰囲気は何処へやら、政宗の笑い声により雰囲気が和らぐ。
笑われたことに顔を赤らめるだったが、その笑いにつられるようにも泣いたままへらりと笑った。
泣き止み、さらにはへらりとした笑みを浮かべたに落ち着いたことを知り政宗は安堵の息をはく。
そうしてまっすぐとを見つめ言った。
「どうした?。」
「・・・。」
それには再び俯き口を閉ざした。
「・・・小十郎に聞いた。の記憶のこと。・・・話したくねぇならかまわねえ。」
その言葉にはばっと顔を上げる。
(政宗様も、私は記憶喪失だと思っていらっしゃる・・・。でも本当は・・・)
政宗と目を合わせたままは言葉を探す。
そんなに政宗は続ける。
「話したくねぇなら、俺はきかねぇ。・・・だが、話さないことでお前が、が苦しむのは俺はやだね。はもうこの伊達軍の一員だ。そして俺はこの伊達軍を、奥州を率いる頂点に立つものだ。苦しんでいる目の前のやつを、俺の国の民をほっとくつもりははなはだねぇ。・・・この国の民全てを幸せに出来るとは思ってねぇ。だが、せめて、目の前にいるやつくれぇはこの手で守りてぇんだ。・・・だから
。いいか?俺は今ここにはいねぇ。独り言なんかもきこえねぇ。だから目の前で何を話されても覚えていねぇ。You see?」
(このひとはなんてきれいなんだろう。)
先ほども思ったことを再び思う。政宗の言葉がの心へとしみこむ。そしてそれは柔らかくの不安をほぐした。
(私はこの人に、決して嘘をつきたくはない。本当のことを話したい。)
「I see.政宗様。」
「!、お前、異国語がしゃべれるのか?」
が言った言葉に政宗は驚きをあらわにする。それにやんわりと微笑みは姿勢を正した。
「Pleasa sound me Mr,伊達。私は決してあなたに嘘をつきたくありません。聞いてくれますか?信じてくれますか?私の途方もない、おかしな話を・・・。」
そう言ったの瞳には迷いはなくて。政宗は不適に微笑んで答えた。
「All right!俺を信じな!」
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