ドリーム小説
無色透明 12
私を目指していたその指はカクさんによって空に向かう。
カクさんの長い足はまっすぐに彼の腕を止めていて。
そんな彼の後ろでへたり込む私。
そんな状況の中、一番に動いたのは___ハットリだった。
ばさばさと空気を読んだのか読んでいないのか。
街頭から降りた彼は定位置であるルッチさんの肩に。
それと同時にルッチさんの腕は降りて、ため息が一つあたりに広がった。
「ルッチ」
堅い声。
それはカクさんのもの。
彼から視線をはずさないまま、カクさんは私をたたせてくれて。
「なんのつもりじゃ?」
再度発せられた声。
もちろんルッチさんに向けられたそれに対して。
顔を上げた彼の表情は、驚くほど冷たかった。
「この場所じゃないところに帰りたい、そう願う相手に一つの方法を試してみようとしただけだが?」
支えられるように肩に回されていた腕の力が強くなる。
話が分からないだろうに、それでも彼は私になにを問うこともしないまま。
「カク、お前こそ何のつもりだ。」
次いで響く、ルッチさんの声。
ハットリを通して会話する理由はこの冷たさを悟られないようにする為なのか。
ぼんやりとした頭でそんなことを考える。
「小娘一人に惑わされて。よもや忘れているまいな。」
意味の分からない会話。
それでも二人の間ではちゃんと通じあっているそれ。
「___ちゃんとわかっておる」
拗ねたような口調。
カクさんはようやっとルッチさんから目をそらして、私をみた。
「、けがはしとらんか?」
ぱたぱたと体中に触れられて確かめられるから、なにもなかったと笑ってみせる。
「大丈夫です。私は、なにも知らないしみてない。」
今の一連の流れがまったく理解できないからこそ、すべてをなかったことにできるから。
そう伝えれば、カクさんの表情は困ったようなものに。
正面からこつり、額同士が合わさって、
「すまん、の」
謝罪の内容はわからない。
それでも、その言葉を放置するわけにもいかなくて。
だから、笑う。
「っぽー」
ばさり、音とともに頭の上に重さ。
鳩は私の上で、くうくうとのどを鳴らして。
カクさんもそれをみて小さく笑ってくれた。
ぐるり、視線を巡らせた先、ルッチさんは近くの水路を眺めて、その水の行く先を見据えて。
その表情は、工場にいたときとおなじ。
航海士さんがみかんを眺めているときとか、コックさんが台所に立っているときとか、麦わら帽子が仲間と戯れているときとか___
大好きなものに接しているときの、柔らかな、表情。
わからない、さっきの二人の会話も、あのこと場達が示すことも、なにもわからないけれど、それでも___
「ルッチさんも、カクさんも、この場所が、この場所にすむ人たちが、大好きなんですね。」
カクさんは、昼間にみたときと同じ、困ったような表情で。
ルッチさんは、感情を凍らせたような冷たい顔で。
「ああ、大好きじゃよ」
「嫌いじゃないっぽー」
そう答えてくれた。
※※※※
CP9であっても、人並みに感情を持つ人間であってほしい
この連載のルッチは若干カクたちに優しい。
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