ドリーム小説
無色透明 2
始まりは突然。
何の予兆もなく、私の体は突如空中に放り出された。
理解が追いつかないまま体に走る重たさ。
それが重力だとか、そういうものだと気づくことはなく。
ただ、おなかの中に走る気持ちが悪い感覚に、落ちているという事実だけを悟る。
気づいたところで止めるすべは見つからず、何が起こっているのかわからないという恐怖に、体はひきつって。
悲鳴なんかでる余裕もなく、地面にたたきつけられるのを待つことしかできなくて。
来るであろう衝撃に、目をつむり体を精一杯縮こめて。
___けれど
衝撃と共に走ったのは、痛みではなく、柔らかなぬくもり。
がくがくと震えるからだを支えてくれるのは力強い何か。
恐怖から強ばったままの瞳を無理矢理世界に向ければ、そこにあったのは目にいたいほどの緋色。
テンガロハットを頭にかぶったその人の黒いきれいな瞳が私を写した。
「おまえ、大丈夫か??」
そばかすいっぱいの顔に驚きと困惑をにじませて、彼、ポートガス・D・エースは不審者以外の何者でもない私を受け止めてくれた。
知らない世界で始めに出会ったのは、太陽みたいにまぶしくて、炎のように強い意志を持った青年。
この世界のことをなにも知らないと告げた私に、帰り方がわからないと泣いた私に、彼は満面の笑みで言葉をくれた。
「なら、俺と一緒に探せばいい」
と。
彼はとある人物を追いかけていて。
仲間を殺した裏切り者を、見つけるために一人で行動していて。
旅自体はとても危険だけれど、私一人くらい守れると。
目的を果たせば、彼の”家”に、家族の元に、一緒につれていって、方法を探してくれる、と約束してくれた。
彼が乗るストライカーという乗り物は、基本的に彼の持つ炎の力によって動いている。
同乗者がいると、一緒に燃やしてしまうかもしれない、そういっていたけれど、なぜか私に彼の能力とやらは通用しなくて。
悪魔の実
それは私の世界では存在していないもの。
とりあえずの結論として、私の世界に存在しないものは、私に影響を与えないのではないか、ということになった。
それが本当か、本当じゃないのか、今は知るすべはないけれど。
「弟が、いるんだ。」
「家族が、たくさん」
「偉大なおやじと世話焼きな兄弟たち」
彼の話はいつもとても興味深い。
聞いているとわくわくしてくる。
けれども、いろんな海を旅する彼にも私の帰り方はわからないらしくて。
落ち込む私に、彼はやっぱり笑って言葉をくれた。
「俺の家族は信じられないくらい、いろんなことを知ってる奴らばっかりだから。誰か一人くらい、それを知っているから大丈夫だ”」
と
見つからない帰り方。
世界に順応していく自分。
すべてが怖くて、恐ろい世界で。
信じられるのも、頼れるのも、たった一人、この人だけで。
「。」
ある時、彼が穏やかに私の名前を呼んだ。
彼をみれば、暖かな表情を浮かべていて。
「俺はおまえを一人にするつもりはない。俺の用事が終われば、今度はおまえの用事につきあってやる。俺の家族と共に、探しに行こうその方法を。」
「でも、もし、万が一。俺がおまえのそばにいれなくなったら、俺の弟を、ルフィを頼れ。」
そんなことはないと思うけれど、そういって彼は笑ったけれど。
それが本当になってなど、ほしくはなかったよ。
おいていかないといった緋色が、ごめんとつぶやいた気がした。
back/
next
戻る