ドリーム小説
無色透明 3
移動手段は自転車。
凍らせて道を作って、という信じられない方法で。
彼の氷にふれることはなかったから、私が能力を無効化してしまうことは知らないまま。
青キジさんが会いたいという人物が、誰かは知らない。
自分が選んだ方法が、彼らにつながっているのかもわからない。
私の世界にあった物語。
海賊王を夢見る男の子のお話。
けれども、私がそれを手に取ったことはなく。
ただ主人公が、麦わら帽子の少年だということしか知らなくて。
それでも、緋色の彼がいない今、頼れるのは彼らだけで。
だから、本当に、驚いた。
偶然、彼らに、出会えるなんて。
目があった瞬間、一度瞳を瞬いて、彼はぱあ、っと笑顔をこぼした。
「おまえ!エースの!!」
きらきらとした笑顔で、伸びた手が、私をつかんで、引き寄せた。
「どうしたんだ??エースに何かあったのか??」
にっこにこの笑顔で彼はやつきばやに言葉を紡ぐ。
それに答えられないでいると、ぺしり、音を立てて彼の頭が沈む。
「レディを雑に扱うんじゃねぇ。」
大きい手に捕まれてふわり、優しくほほえまれて。
「うちの船長が失礼いたしました、マドモアゼル。」
きれいな金色が揺れる。
目にいたいはずの、その色彩は、けれども柔らかな光を宿していて。
「・・・すごくきれい。お月様みたい。」
ぼろり、こぼれた言葉に目の前の彼は、きょとんとした表情。
恰好いい人は、どんな顔をしていても恰好いいんだな、と思いながらその顔を見つめ続ければ、そっと視線をはずされて、頭を二度ほどなでられた。
「・・・知り合い?。」
突如入り込むのは、青キジさんの低い声。
するり、手を外して青キジさんに向き直る。
と、
「ロビン!?」
突如あがる声。
そちらをみればおびえたように体をふるわせる美女。
「いい女になったじゃないの、ニコ・ロビン。」
私に向いていた視線が、言葉が、すべて彼女に向かう。
それにより一層彼女は体をふるわして。
青キジさんと美女さんの間に彼らが割り込んで、守るように構える。
「ニコ・ロビンは裏切るぞ。」
青キジさんの言葉は、理解できない。
難しい、というよりも、仕組みが、世界が違いすぎて、理解が追いつかない。
でも、彼女が、しんでしまうのは、だめだと、そう思った。
「。」
凍り付く直前の彼女にしがみつく。
そうすれば、そこで氷の進行は止まって。
青キジさんに能力が効かないという話をしたことは、なかったから。
その顔には驚きが浮かんでいて。
「どういうつもりだ?。」
鋭い視線。
向けられる言葉は、冷たい。
「私の目的は、この人たちなんです。」
私の言葉に青キジさんの視線はさらに鋭さをまして。
ごめんなさい
小さくつぶやいた声は、届いたのだろうか。
どんなによくしてもらおうとも、私の一番の目的は、あの世界に帰ることで。
そのために一番いいのは、いろんなところを旅すること。
だから私は彼が頼れといった弟さんに会いに来た。
「ロビンを船に連れていけ!!」
弟さんが、叫んで、みんなが動き出す。
青キジさんの鋭い視線に体がじわり、固まるけれど、必死にこらえて。
たった一人残った弟さんを、見守る。
氷付けになった弟さんを、ぎゅう、と抱きしめてみせれば、青キジさんは困ったようにため息を一つ。
青キジさんが私に手を出すことはなく、ただ純粋な疑問をぶつけられた。
「悪魔の実が効かないのはどうしてだ?」
「私が、この世界の理からはずれているから。」
私の言葉に青キジさんはすう、っと瞳をすがめて。
「・・・迷子、っていうのは、嘘だったのか?」
「私が迷子なのはほんとうのことです。世界規模で、迷子なんですよ。いつだって、自分の世界への帰り方を探してる。」
私の言葉に青キジさんはやっぱりため息をはいて。
「いつか、目を付けられるよ。」
そんな言葉を落とす。
けれど、そこに込められる意味に、気づく。
それは、今のことではない、と。
「青キジさん。ここまで送ってくださってありがとうございます。」
腕の中の冷たさを感じながら感謝の言葉を贈れば、彼はひらひらと手を振って去っていった。
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