ドリーム小説







無色透明 5















笑顔があふれるその船は、とても優しい人たちばかり。

転がり込んだ私を、仕方がないなあ、といいながらも受け入れてくれた。


「私はナミ。この船の航海士をしてるわ。好きなものはお金とみかんよ。」

オレンジ色の髪が特徴的な彼女は、ふわりと笑う。

「料理に関しては、俺にお任せを。どうぞサンジとお呼びください。」

金色の彼はたばこをくゆらせて優雅に頭を下げる。

「俺はチョッパー!医者だ!怪我したら治療してやるからな!」

小さな背でトナカイは必死に存在を主張する。

「俺は、勇敢なる海の戦士、キャプテーンウソップだ!射撃の腕なら誰にも負けねえ!」

長い鼻をさらにふんぞり返らせて、少年は得意気に話す。

「ふふ、私はロビン。考古学者よ。」

艶やかに微笑んで、女性は私を見つめる。

「ゾロ。剣士だ。」

ぶっきらぼうに緑色の彼は告げる。

「俺の大事な仲間たちだ!!」

すごいだろう、と自慢するように、麦わら帽子の少年は満面の笑みを浮かべて。

みんなの視線が一斉にこちらを向く。

無言で促される自己紹介に一度だけ息をはいて。

。学生で専門は語学。得意なことは事務業務全般。エースさんと一緒にいた理由は、私の目的を達成する方法を探すため。」

まっすぐに、一人一人と視線を合わせて言葉を紡ぐ。

「ここにいる理由は、エースさんが、姿を消したから。」


「待って。あなたの目的は、何?」

オレンジ色の発言に、ふわり、笑い返す。

「私、迷子なんだ。それも、すごく大きな範囲で。」

先を促す視線に、柔らかく声を出す。

「私の目的は、ここではない、私の生まれた世界に、帰ること。」

ぴたり、喧騒が止まる。

それぞれ意味の違う視線が向けられて。

、おまえ別の世界からきたのか!?」

目を、きらきらとさせて興奮するのは麦わら帽子とトナカイと長鼻さん。

「それ、本当?」

うろんげな表情を見せるのはオレンジ。

「あら、楽しそうなお話。」

楽しそうに頬をゆるめたのは考古学者さん。

「・・・」

瞳を細めただけの緑。

金色は一度、二度、瞳を瞬かせて、傍観するように口を閉ざす。

「本当。私が生まれたのは、地球にある日本という国。育ったのももちろんそこ。」


頭に広がる、上辺だけは平和な世界。

それでも、私にとっては暖かな愛おしい場所。

常に自分を守ることを必要とされるこの世界ではどこにもない、優しい所。


大切で大事な家族たちがいる、私の、居場所


「まあ、偉大なる航海なら何があっても不思議じゃあないな。」

未だにうろんげな視線を向けてくるオレンジを制したのは金色。

その言葉に仕方がなさそうにオレンジも息を吐き出して。


「いいわ。信じてあげる。今、あなたが嘘をつくことであなたに利があるとも思えないから。」


の世界の話、聞かせて欲しい。」

相変わらずきらきらと輝く瞳を携えるトナカイに笑ってうなずいてやれば、きゃあきゃあとうれしそうにはしゃぐ姿。

「チョッパー、その話は後でね。、もう一つ。」

オレンジ色が優しくトナカイを諫めて、まっすぐな瞳を再度私に向ける。


「エースが消えたって、どういうこと。」


私は、その発言に対する言葉を持ってなどいないのだけれど。


「そのまんま。エースさんは私を置いて、姿を消したの。」


紅をまとう、太陽のような彼は、私をおいていかないといったそのそばから、簡単に姿を消した。



「置いていかれたんじゃねえの?」


静かな空間に響くのは、緑色の声。

その言葉は、ひどく柔らかい棘となって、じわじわと胸に突き刺さってきた。

思いたくなんて無かった。

置いていかれたなんて、彼が、私をおいていっただなんて、思いたくなかった。



でも、きっと、それが、事実。


「こんの、クソマリモ!」

金色が、空気を破るように立ち上がって、緑色に詰め寄る。

「ああ?なんだ?やんのか、グルグルマユゲ。」

緑色が答えるように立ち上がって。


「きっと、正解。」


ぽつり、つぶやいた言葉は騒がしいその場所でも、なぜか響いて。


ぴたりと二人の動きが止まる。


「ゾロさんのいったとおり。きっと私はエースさんに置いていかれた。」


紅の炎が、彼の色が、ちらちらと瞼の裏で瞬く。


「足手まといでしかない私は、おいてかれるに決まっていたのに。」



彼の優しさに、甘えた。

私の存在は彼の目的の邪魔にしかならないというのに。



「だから_」

「この間会ったとき、エースは言ってたんだ。」

私の言葉を遮ったのは今まで黙り込んでいた麦わら帽子。

まっすぐに、意志の強い瞳が私を貫く。

「”俺に何かあったら、を頼む”って。」


「エースは途中で見捨てるような簡単な気持ちでを助けたんじゃねえ。たぶん、置いていかざるを得ない状態だったんだ。」

鋭かった視線が、ふわり、ゆらいだ。

「大丈夫。エースはをちゃんと迎えにくる。」


まぶしいまでの笑顔と共に


「だから、それまでは、俺たちがおまえを守ってやるよ。」


ぽん、と頭に乗せられた手が、優しく頭をなでた。





















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