ドリーム小説
無色透明 8
先ほどまで騒がしかった船内が、いつのまにか静かになっていて。
おかしいな、と気がついたのはだいぶん遅くて。
ゆっくりと引きこもっていた女部屋からでていけば、そこには誰もいない。
代わりに目の前にはきれいな大きな町が広がっていた。
「・・・置いていかれた。」
もうすぐ街に着く、というのは聞いていたけれど本に集中していたため聞き流してもいて。
初めてのちゃんとした街なので、服とか生活用品とか、いろいろ買うつもりにしていた。
一人で船を下りれるほどの度胸はないので、誰かと一緒に。
そう思ってもいたのに。
まさか、誰もいなくなるとは。
しかたないので帰ってくるまで待つか。
ため息をはいて、ゆるり、甲板を歩けば目のはしに緑色がうつる。
惹かれるまま目をやれば、そこには豪快に寝転がって眠る、この船の剣士の姿。
「・・・置いていかれたわけじゃなかったんだ。」
少しだけほっとして彼に近づく。
ひょこり、のぞき込むが眠る姿は変わらず。
大きないびきも響くまま。
さすがに一緒に買い物についてきて、といって起こすわけにはいかない。
さらにはこの船で一番打ち解けていない剣士さんなわけで。
こんなに近くでみたのは初めて。
整った顔立ちをじいっと見つめる。
この髪は柔らかいのか、堅いのか。
気にはなるけれど、さわれるほどの関係ではない。
と、
「見張りは二人だけか!ラッキーだな!」
突然何人もの男たちが姿を現す。
一様に武器を手にする彼らは、愉しそうに口元をゆがめて。
口々に発せられる言葉にこの船がねらわれていることとこの剣士さんに害をなそうとしていることがわかって。
かちゃり
構えられる刃。
きらりと光それに体はふるえる。
けれど、後ろの剣士さんは眠っているわけで。
ゆっくりと剣士さんにふれて、抱きしめるように抱え込む。
私なんかじゃ盾にはなれないけれど、それでも、目の前でこの人がやられてしまうのはイヤで。
ぎゅう、と抱きしめて、相手をにらみ付ける。
「なら、一緒に死んでしまいな。」
言葉と同時におろされる刃にぎゅう、と目を閉じた。
次の瞬間。
包んでいた温もりに、逆に包まれる感覚。
そして、きいん、と響いた刃のすれる音。
「弱ぇくせに無理すんじゃねえよ。」
愉しそうに、剣士さんは笑って告げた
※※※
W7突入。
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