ドリーム小説










towa-1



視界が薄紅色に覆われる。

「うわあ・・・。」

感嘆の声をあげ見上げるは、大きく立派な桜の木。
丁度満開のそれは、風により木全体を揺らし薄紅色の花びらを撒き散らす。

「きれい・・・。」

きらきらと、揺れる枝の間からのぞく木漏れ日が、さらに桜を印象づける。

「・・・うん。いい日になりそうだ。」
そう言って頷くと、目的の場所へ足を進めた。



ここ、戦国私立婆娑羅学園は幼稚舎から大学院まで一つの敷地内に収められた超マンモス校である。
一学年に、15組というありえないクラス数から見ても解るように、人数がはんぱ無い。
入ってしまえばほぼエスカレーター式に大学までいけるため、幼稚舎からこの学園に通うものは顔見知りばかりといっても過言ではない。
だが逆に中学、高校からこの学園に入るにはとんでもない競争率のなかを潜り抜ける必要がある。
そのため、外部の人間にとっては、超難関校と言われているのだ。


そして今日はこの戦国私立婆娑羅学園の入学式である。


講堂に集められた新入生の前で、一人の男性が壇上へと上がる。
黒いスーツを見事に着こなしたその男性はそこに置かれた、台の前に立つと、ただ一言、

「是非もなし!!」

そう言うと再び壇上から姿を消した。

「・・・何だ、いまの・・。」
ぽつりと呟くは新入生の一人である少女。
名をと言う。
めずらしくもこの婆娑羅学園の数少ない外部生の一人である。
はきょろきょろと辺りを見渡した。
が、今の演説に驚きや困惑を感じたのはごく一部の生徒だけみたいで、それ以外の生徒たちは普通に受け流していた。
(・・・あたしこのがっこについてけんのか・・・?)
はぁ、と小さく溜息をついているとつんつん、と服が引っ張られるのを感じた。
(?)
不思議に思いその感覚をたどると、それは隣の少女からで。
「・・・?」
引っ張られることに、思い当たることの無いはきょとりと首を傾ける。
「初めまして!私は越後あきは。あなたは?」
金の色に輝く髪を持つその少女はそう言って笑った。
「・・うん。初めまして。あたしは、。・・・、越後、さん?」
「あきはでいいよ?」
「ん、じゃあきは。あたしも好きに呼んでくれてかまわないよ?えぇと、よろしく。」
「うん!よろしくね?・・は、外部生だよね?」
「ん?そだけど、・・・わかる?」
「うん。始めて見る顔だし、それに織田先生にすごく驚いてたから。」
「織田先生?」
「さっきの先生のことだよ。この学園の校長先生。内部の人間はもう驚かないからね。」
・・・つまりはいつもあんな人だということか。
げんなりとした表情を見せるにあきははころころと笑い、続けた。
「大丈夫。もすぐに慣れるわ。」
(・・・慣れたくない・・・。)

幸いにもと言うか、二人の席は程よく列の中側だったため、誰にもとがめられること無く小声で話続けた。
。次生徒会長の話だよ。」
と、壇上に目をやっていたあきはがにそう言った。
「生徒会長?」
首を傾げたはざわりと空気が変わったのを感じた。
向けた視線の先。
変わった気配の持ち主。
そこにいたのは、整った顔の知性的な男性。
肩までの髪は色素の薄い茶色で、すこしのはねをもっている。
綺麗と言える風貌だがどことなく冷たい雰囲気を感じる。
「新入生よ。」
その男性が話し始めた。
声は低く、ゆっくりと体になじむ音。
「我の名は、毛利元就。この学園の高等部生徒会長を務めている。我の手となり足となりそして駒として、この一年を過ごせ。
そして、この日に日輪に感謝の意を示し日輪を崇め奉れ。」

「・・・あれ、何・・・?」
「ふふ、個性的な生徒会長でしょ?」
「・・・個性的というか、何と言うか・・・。」
(・・・生徒会長が、あれでいいのか?)
担当の教職員の発表や注意事項など話されるが、はその後もカルチャーショックとも言える物ににうちひしがれていた。

そうしているうちに入学式は終わりクラスに向かう廊下でのこと。
「・・・このがっこ、広すぎる・・・。」
あまりの広さに、げんなりと呟くにあきはは笑い答える。
「ふふ、始めのうちは迷うわ。早くなれないとほんとに大変よ?」
そう言うあきははこの学園の持ち上がり組らしく、もう慣れたとのこと。
一緒にいるときは案内でもしてあげる、と言うあきはにふ、と微笑み感謝を述べる。
と、あきはも同じように笑い返してくれた。


「今日は、これで解散じゃ。明日は連絡したとおりじゃぞ。」
入学式のため早く終わった学校。
担任となった、北条先生はそういうとよぼよぼとした足取りで出て行った。

「可愛い先生だよね?北条先生。」
帰り支度をするにあきはは言う。
「・・・かわ、いい?」
(・・・いや、たしかにあのよぼよぼとした足取りや姿は可愛いと言えなくはないかもしれないが・・・あきはの感性がいまいちわからん・・・。)
がそう思っているのは知らないのであろうあきはそういえばと続ける。
は部活、何するの?」
「あ〜。あたしバイトしてるから、部活ははいんないよ。」
「そうなの?んー私の部活に勧誘しようかと思ってたのに。」
「?何部?」
「新体操部。」
「ごめん無理だ。」
「え、即答?」
あきはの誘いに興味を引かれただったが、答えを聞きすぐに切り替えした。
「・・・でも、あきはの部活する姿は見てみたい。」
「・・・ほんと?」
しょぼんとするあきはを見て、は少し罪悪感を感じそう言った。
それにさっきとは打って変わりぱあぁと言う効果音が聞こえてきそうな笑顔で聞き返したあきは。
その姿がすごく可愛くて、思わずも笑顔をこぼす。
(女の子だなぁ・・・。)
「ああ。だが、・・・。」
「じゃあ行こ!」
「あたしはこれから・・・」
「部長はね私のお姉ちゃんなの!」
「バイトが・・・」
「きっと、も気に入るわ!」
「・・・聞け。」
ぐいぐいと引っ張られる腕。
話しを聞かないあきはには溜息をつきぺしりとデコピンをお見舞いする。
「っい、たっ・・・。」
それに腕から手を離しおでこをおさえるあきは。
それには苦笑しあきはのおでこを撫でる。
「ごめん。あきは。あたしこれからバイトなんだよ。だから、明日、見に行っていいか?」
痛みに涙目になっていたあきははその言葉に仕方ないなあと言うように笑い、頷いた。
















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